中小賃上げ、3.35%=大幅増も二極化―23年春闘 2023年05月10日

 連合は10日、2023年春闘の第5回集計結果を公表した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ率は、300人未満の中小労働組合で平均3.35%(8328円)。急激な物価上昇を背景に前年同時期の2.02%を大幅に上回ったが、会社や地域によって賃上げ率は二極化している。
 金属産業の中小労組が多く加盟するJAMは、ベア獲得額が0~3万円と組合ごとに差が広がった。経営側も「今回はばらつきが大きかった」(中小企業家同友会全国協議会の広浜泰久会長)と振り返る。
 カギを握ったのは、原材料価格の高騰分や労務費を製品価格に転嫁できたかどうか。東京都内の中小金属製品メーカーは1万円の賃上げを実現。ただ、経営者の男性は「賃上げ分を価格に乗せないのが『常識』。今回のようなチャンスはまれだ」と話す。
 都市部と地方の格差も目立つ。JAMの集計で鳥取、島根両県はベアの平均が5074円と、東京・千葉を1000円近く下回る。JAM山陰の前田陽生書記長は「格差が広がれば衰退が加速する」と危機感を募らせる。政府は労務費の価格転嫁を呼び掛けているが、第一生命経済研究所の新家義貴氏は「地方の中小企業は交渉力が弱い。どこまで広がるかはっきりしない」と話す。
 今回の連合集計で、全体の平均賃上げ率は3.67%。7月公表の最終集計で前年の2.07%をどれだけ上回るかが焦点だ。 

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連合のロゴマーク=東京都千代田区
連合のロゴマーク=東京都千代田区

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