G7、化石燃料「段階的廃止」=石炭火力活用など道筋は対立―環境相会合 2023年04月17日

 先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合が16日に採択した共同声明には、二酸化炭素(CO2)排出削減の対策を講じていない化石燃料を「段階的に廃止する」方針が盛り込まれた。産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える「パリ協定」の目標達成への取り組みを加速させるのが狙い。ただ、各国のエネルギー事情の違いから、石炭火力発電の廃止時期など脱炭素化への具体的な道筋で対立も目立つ。
 化石燃料の段階的廃止は、英国が提案しフランスが同調する形で声明に盛り込まれた。従来はCO2排出量の多い石炭火力の段階的廃止にとどまっていた。今後はCO2を回収し、地中深くに貯留する「CCS」などの対策が取られていない天然ガス火力なども対象となる。
 焦点の石炭火力では、再生可能エネルギー導入で先行するドイツや英国が「30年までの段階的な廃止」を要求。一方、再エネ普及が進まない日本は、30年度も電源の19%を石炭火力に依存する計画だ。今回の声明では「段階的廃止」と昨年の内容を踏襲しつつ、1.5度目標達成と「整合性を取る」との新たな条件を加えた。
 日本は燃焼時にCO2を排出しないアンモニアを石炭に混ぜる混焼を進めながら、石炭火力の存続を目指す。稼働年数の短い石炭火力を抱えるアジア地域にも混焼技術を展開し、地域全体の脱炭素化を支援する。ただ、アンモニアを50%混焼してもガス火力よりCO2排出量が多いとされ、欧州を中心に批判が強い。
 原発活用でも意見は割れた。声明では「原子力エネルギーの使用を選択した国」に限定した上で「手頃な低炭素エネルギーとエネルギー安全保障を確保する潜在性を認識する」と表現した。西村康稔経済産業相は会合後の記者会見で、「各国にはそれぞれのエネルギーと経済の事情があり、脱炭素化への道筋は多様であると認めながら、共通のゴールを目指すことを確認できた」と述べた。 

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