サイバー局と特捜隊、発足1年=海外機関との連携進む―重大事案摘発目指す・警察庁 2023年04月01日

 深刻化するサイバー犯罪に対応するため創設された警察庁の「サイバー警察局」と「サイバー特別捜査隊」は1日で発足から1年を迎えた。海外の捜査機関との連携を強めており、国際共同捜査で攻撃グループの摘発を目指す。
 同局は、これまで庁内の警備局や生活安全局などにまたがっていたサイバー部門を統合し、攻撃手段の解析などを担う。特捜隊は、国の機関や発電所などの重要インフラの被害、海外からの攻撃など「重大サイバー事案」の捜査を担う。
 関係者によると、最も進んだのは国際共同捜査への参加だという。これまでは海外からの攻撃だと検挙の可能性が低いため、被害相談を受けても対応に二の足を踏むケースが多かった。態勢が整っている警視庁などは別として、地方警察では技術力や言語の壁があり、初動捜査すら十分にできない状態だったという。
 新体制では、都道府県警察が行っていた海外への国際照会を、同局に一本化。初動捜査が適切に行われるようになり、情報の集約が進んだ。全国から優秀な人材も集まり、身代金目的でデータを暗号化するウイルス「ランサムウエア」の一部に対して有効な、データ復元ツールを開発した。
 捜査権限に限界がある日本では、情報集約が武器となる。また、こうした情報が海外当局の捜査や対策へのヒントとなれば、共同捜査に日本が加わる足掛かりともなる。関係者は「海外と被害情報を共有することで、事件の全体像を迅速に把握でき、容疑者特定へとつながる」と話す。
 現在、ランサムウエアによる被害などの事案で、国際共同捜査を展開中という。摘発事例はまだないが、容疑者検挙やネットワーク壊滅などを目指している。
 日本サイバー犯罪対策センター理事を務める明治大の湯浅墾道教授(情報法)は、「華々しい成果の公表はまだだが、国際対応の窓口一本化、都道府県警の技術支援という当初の目的は達成できた」と評価。「今後は、暗号化情報の復号や解析能力が課題になる。技術力は民間が高く、官民連携で取り組む必要がある」と指摘する。 

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