物流危機まであと1年=政府、6月に緊急対策―2024年問題 2023年03月31日

 政府は31日、物流の効率化やトラック運転手の処遇改善に向けた緊急対策の検討に入った。ドライバーの時間外労働に年960時間の上限が課される2024年4月まで残り1年。人手不足の深刻化により、モノの移動が滞るとの懸念が高まっている。解決には、荷主企業や消費者の協力も欠かせない。
 「何も対策を講じなければ物流が停滞しかねない」。岸田文雄首相は31日、「24年問題」の関係閣僚会議の初会合で危機感を訴え、6月上旬をめどに対策をまとめるよう指示した。
 近年、物流業界には大きな負担がのしかかっている。コロナ禍もあってインターネット通販が急拡大し、宅配便の取り扱い個数は増加の一途。21年度には約49億個に達し、10年前の約1.5倍に膨らんだ。
 慢性的な人手不足でトラック運転手の年間労働時間は全産業の平均よりも約2割長い一方、年収は約1割低い。有効求人倍率は全産業平均の2倍に上り、業界関係者は「ドライバーが集まらない理由は労働条件の厳しさにある」と指摘する。
 長時間労働は長距離輸送のほか、荷待ち時間の長さや契約外の荷役作業を強いられやすいといった商慣行による側面も大きい。共同輸送のほか、会社によって大きさや形状が異なる荷役台(パレット)の標準化、業務のデジタル化が急務だが、24年問題に関する荷主企業の認知度は5割程度にとどまる。
 下請け、孫請けと連なるトラック運送業界の構造を是正することも課題だ。全体の99%を占める中小事業者が、荷主や大手との交渉でガソリン代や人件費の上昇分を運賃に転嫁するのは容易ではない。国土交通省が20年に交渉の参考として「標準的な運賃」を示して価格転嫁を後押ししているが、「賃金は全産業の平均に近づいているとはいえ、まだまだ低い」(全日本トラック協会幹部)のが実態だ。
 一方、宅配便の再配達率は12%程度で、引き続き配達現場の重荷になっている。国交省などは「意識醸成の取り組みが十分ではない」として、再配達削減のPR活動を強化する方針。荷主企業には物流を管理する役員クラスの責任者を配置させる仕組みを検討する。 

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物流「2024年問題」の関係閣僚会議で発言する岸田文雄首相(右)=31日午前、首相官邸
物流「2024年問題」の関係閣僚会議で発言する岸田文雄首相(右)=31日午前、首相官邸

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