大手企業、「囲い込み」に懸命=初任給増、希望の配属も―時事通信の主要100社調査 2023年03月23日

 企業の人材獲得競争が激化している。時事通信が国内主要企業100社を対象に実施した調査では、約2割に当たる18社が2023年春採用で当初の予定人数を「満たせなかった」と回答。少子化などを背景に、学生優位の「売り手市場」が続く中、初任給を引き上げたり、希望に沿った配属先にしたりする動きが目立つ。選考段階から「囲い込み」に懸命な日本企業の姿が浮かび上がる。
 初任給については、100社のうち33社が23年春入社から、3社が24年春入社から引き上げる。物価高に対応するほか、「採用訴求力の向上」(三井住友銀行)、「若手の確保のため」(大和ハウス工業)と、収入面でアピールする狙いもある。調査時点で「検討中」とした企業も多く、初任給を増やす動きはさらに広がる見通しだ。
 望まない職場に配属され、離職するケースも増えている。このため、53社が23年春採用までに新人の希望と配属先のミスマッチを防ぐ仕組みを導入。24年春採用からは5社が同様の仕組みを活用する。「応募時点で(希望者が)離脱するなどの課題を解消する」(三菱電機)ことに加え、内定辞退の防止にもつなげる。
 コロナ禍で対面でのゼミやサークル活動が制限されてきた学生に配慮し、「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」に関する質問を見直す動きもある。三菱地所は24年春採用に向け、インターンシップのエントリーシートでガクチカの代わりに自分の過去を振り返る「自分史」の記入を求めた。日立製作所は、面接でガクチカを聞くことをやめ、入社後に取り組みたいテーマなどに改める。
 このほか、日本郵政、三菱重工業、日本たばこ産業(JT)は選考に人工知能(AI)を活用。三菱UFJ銀行や積水ハウスは、社員の知人らの中から優秀な学生を発掘する「リファラル採用」を重視する方針だ。企業の採用担当者らが学生に積極的にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」に取り組む事例も複数見られた。 

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