迫るデブリ取り出し作業=処理水放出、根強い反発―事故から12年・福島第1原発 2023年03月07日

 東京電力福島第1原発事故から12年。同原発では2023年度、溶け落ちた核燃料(デブリ)を取り出す困難な廃炉作業に着手する。春から夏にかけては、処理水の海洋放出も見込まれるが、漁業関係者らの反発は根強い。
 事故時に起きた炉心溶融(メルトダウン)の影響で、1~3号機には核燃料と炉内の構造物が溶けて混ざったデブリが880トン存在するとみられている。東電は23年度後半、2号機で試験的に取り出しを始める予定だ。
 最初は小さなデブリ1、2粒だけを取り出す。東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明代表は「小さい粒かもしれないがデブリを分析できる。今後の作業に向けて大きな第一歩になる」と強調する。分析結果を参考にしながら、徐々に取り出し量を増やしていく方針だ。
 一方、デブリ冷却などで生じた汚染水を浄化した結果、日々発生し続けるのが処理水だ。2月時点で計132万トンがタンクに保管され、東電は夏から秋には満杯になるとみている。
 放射性物質の計測用タンクや、放出用のトンネルといった海洋放出に向けた工事は今春に終わる見通しで、政府と東電は春から夏にかけての放出開始を目指している。
 ただ、政府は放出について「関係者の理解なしに、(処理水の)いかなる処分も行わない」と約束してきた。地元漁業者の反対が根強い中、どのように理解を得るかが課題だ。
 1、2号機の使用済み燃料プールからの燃料棒取り出しも課題の一つだ。1号機ではプールの上に積み重なったがれき撤去の際に放射性物質が飛散しないよう、大型カバーの建設が進んでおり、23年度内の完成を目指している。
 建屋周辺は依然として放射線量が高いため、できるだけ離れた場所で部品を組み立て、作業員の被ばく線量を抑える方針だ。 

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