徴用工、解決策を評価=日本政府、関係改善へ韓国世論見極め―首脳会談、月内実施も 2023年03月06日

 韓国政府が発表した元徴用工問題の解決策について、日本政府は「日韓関係を健全な関係に戻すものとして評価する」(岸田文雄首相)と前向きに受け止めている。弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や、東・南シナ海への進出を図る中国に対抗するため、日韓両国の連携が重要度を増す中、本格的な関係改善につながることを期待。韓国内の世論動向を見極めつつ、輸出規制など残る課題の進展も慎重に探る方針だ。3月中に対面での首脳会談を行う案も浮上している。
 首相は6日の参院予算委員会で「韓国はさまざまな課題への対応で協力するべき重要な隣国で、日韓、日米韓の戦略的連携を一層強化していく必要がある」と指摘。その上で「今後も尹錫悦大統領と意思疎通を緊密に図り、日韓関係を発展させたい」と意欲を示した。
 元徴用工問題などを巡る対立で、日韓関係は「戦後最悪」と言われるまで冷え込んだ。これに関し、首相は「健全な関係に戻すため、努力を続けたい」と強調した。
 韓国側の発表を受け、日本側は林芳正外相が直ちに記者団の取材に応じ、歓迎の意を表明。韓国への半導体素材などの輸出規制や、貿易管理手続きを簡素化する「ホワイト国」からの除外についても、両国間の協議再開を発表するなど「雪解けムード」を演出した。
 日本政府は、保守系の尹政権が誕生して以降、関係改善の熱意が本物か注視。両首脳も、昨年9月の米ニューヨークでの「懇談」、同11月のカンボジア・プノンペンでの約3年ぶりの正式会談と、信頼関係を積み上げてきた。
 発表前日の5日には、林氏と朴振外相が電話会談し、詰めの調整を行った。外務省幹部は「尹政権は本気で元徴用工問題を解決するつもりだ。信用できる」と手応えを口にする。
 北朝鮮や中国への対応を重視する米国が、同盟国である日韓両国に、早期の関係改善を求めていたことも背景にある。バイデン米大統領は談話で「二つの最も緊密な同盟国の協力とパートナーシップの画期的で新たな一ページを刻んだ」と称賛した。
 韓国に厳しい立場を取る自民党内の保守派も、今回の解決策を評価している。中堅は「韓国もよく折れた。日本の要求はほぼ通った」と納得顔。若手も「日本も韓国もメンツが保たれる結果だ」と語った。
 ただ、日韓間の懸案を巡っては、これまでも韓国側が国内世論の反発を抑えきれず、日本側との合意をほごにしてきた経緯がある。日本政府関係者は「日韓関係は韓国国内の反発で方針が変わる。基盤の弱い尹政権がこのまま進めることができるのか」と慎重姿勢を崩さない。
 韓国側は、尹氏による3月中の来日実現を要望。5月に広島市で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)へのオブザーバー参加も期待している。日本側は、今後の韓国側の動きをにらみながら、是非を判断する構えだ。 

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参院予算委員会で答弁する岸田文雄首相=6日午後、国会内
参院予算委員会で答弁する岸田文雄首相=6日午後、国会内

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