企業、賃上げ表明続々=人材確保に危機感―春闘 2023年02月21日

 2023年春闘の労使交渉に先行する形で、企業の賃上げ表明が相次いでいる。持続的な成長のため、デジタル人材を中心に企業間で争奪戦が激しくなっていることなどが背景にある。デフレや経済の低成長が続いてきたことで、日本企業の平均給与は欧米や韓国などにも見劣りしており、人材の海外流出への危機感も強まっている。
 賃上げ幅では、連合が目標に掲げる「5%程度」を上回る例が増えている。任天堂の古川俊太郎社長は7日、全社員の基本給を10%増額するベースアップ(ベア)を4月に実施すると明らかにした。23年3月期連結決算は減収減益の見通しだが、古川氏は「競争力の向上へ優秀な人材の獲得が不可欠だ」と説明する。
 化学メーカーのクラレはベアと定期昇給を合わせて8%程度の賃上げを表明した。川原仁社長は「人にしっかり投資をすることで、将来の収益を生みだす好循環を目指していく」と強調。ガラス大手AGCもベアと定期昇給を含め平均6%程度の賃上げを検討すると発表した。
 カジュアル衣料「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングは年収で最大40%の賃上げを発表した。日本電産は、23年度からグループ全体で社員の平均給与を7%引き上げる方針。同社は、25年度までに社員の平均給与を30%引き上げる計画も示している。
 経済団体関係者は「春闘では個別の会社の取り組みは埋もれてしまう。先取りして(採用に向けて)アピールする狙いがあるのだろう」と指摘する。約5%の賃上げ方針を1月に打ち出した生活用品メーカー、アイリスオーヤマの大山晃弘社長は「採用面でポジティブな反響があった」と明かした。
 日本総合研究所の山田久副理事長は「グローバルで競争する企業は、国際的に見た日本の賃金水準の低さを意識し始めている」と指摘。その上で「人材を本当に確保できるのか。若く、優秀な人材が外資系などに取られてしまうという危機感があるのではないか」とみている。 

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連合の2023年春闘総決起集会で気勢を上げる参加者=6日、東京都北区
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