日本のLNG調達、綱渡り続く=争奪戦さらなる激化も―ウクライナ侵攻1年 2023年02月20日

 ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月下旬以降、日本の液化天然ガス(LNG)調達は綱渡りの状態が続いている。欧州のガス不足などによるLNGの世界的な争奪戦のさらなる激化も懸念され、日本政府も確保に躍起となっている。しかし、中長期的なエネルギー安定供給の強化に向けた青写真は描き切れていない。
 日本の21年のLNG輸入量(約7432万トン)のうちロシア産は657万トン(輸入量に占める割合は8.8%)で、オーストラリアやマレーシアなどに次ぐ5番目の調達先。ロシアからの輸入分の大半を賄う石油・天然ガス開発事業「サハリン2」は日本の商社2社の権益維持が危ぶまれるなど、先進7カ国(G7)の中でもエネルギー自給率が最も低い日本の「アキレスけん」となっている。
 22年6月にプーチン大統領はサハリン2を新たな運営会社に移管する大統領令に署名、日本に揺さぶりを掛けた。一時は供給停止も危ぶまれたが、ロシア側との協議の末、日本の電力・ガス大手各社は、サハリン2の新たな運営会社とLNG購入契約を締結。保坂伸資源エネルギー庁長官は「よくしのいだ」と安堵(あんど)した。
 とはいえ、「途絶リスクは常にある」(政府関係者)のが実情。22年末には、戦争による損害を補償する保険の提供停止を損害保険各社が船主に通知したため、サハリン2からの供給遮断は現実味を帯びた。結局、保険の当面継続が決まったが、欧米の対ロ経済制裁に足並みをそろえる日本への報復措置として、ロシアが出荷禁止に踏み切る懸念もくすぶる。
 欧州は今冬が暖冬だったほか、世界最大級のLNG輸入国である中国での需要減少もあり、エネルギーの需給は逼迫(ひっぱく)していない。しかし、ロシア産ガスの輸入が停滞する中、欧州にとって次の冬に向けて発電や暖房に使うLNGの確保が急務であることに変わりはない。
 都市ガス大手関係者は、LNG調達を巡り「日本が欧州に買い負ける場面が出てくる」と指摘する。その場合、国際市場で割高な購入を迫られ、消費者に負担がのしかかる。調達先の多角化に向け、日本の商社や電力会社は22年末、中東のオマーンからLNGを25年以降の約10年間に年間235万トンを調達することで基本合意したが、サハリン2からの供給分には届かず、万全の体制とは言いがたい。 

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