自治体も「異次元」子育て支援=独自の現金給付導入相次ぐ―地域間格差に懸念も 2023年02月18日

 岸田政権が「異次元」の少子化対策を掲げる中、地方自治体の間でも、2023年度予算案でこれまでにない規模の子育て支援策を盛り込む動きが相次いでいる。東京都や岐阜県などは独自の予算で現金給付に乗り出す方針。子育て支援の充実に期待が高まる半面、住む地域によって支援策に差が生じることへの懸念も指摘されている。
 子育て支援を巡り、国は妊娠期と出産時に計10万円相当を給付する「出産・子育て応援交付金」制度を新設。さらに、異次元の少子化対策の柱として、児童手当の所得制限撤廃や対象年齢引き上げが与野党の議論の俎上(そじょう)に載っており、国は3月末にたたき台をまとめる。
 これに対し、東京都の小池百合子知事は1月、国の動きを「遅い」と指摘し、0~18歳の全ての子どもに月額5000円支給する方針を表明。2月の都議会では「少子化は紛れもなく国の存亡に関わる国家的課題だ。首都である東京がリーダーシップを取り、発想の転換を導く」と宣言した。
 岐阜県が創設するのは、第2子以降の出産時に1人当たり現金10万円を贈る祝い金事業。古田肇知事は「空気を変えるような取り組みをしないと、進学、就職、結婚を機に(若者が県外に)流出してしまう」と危機感を示す。担当者は「国の少子化対策との相乗効果に期待する」と語る。
 秋田県は国の交付金に合わせ、昨年4月以降に生まれた子どもに1人当たり2万円を支給する。「安心して子育てできる地域だとアピールする」(担当者)のが狙いだ。三重県は子育て支援で独創的なアイデアを出した市町に対し、5000万円を上限に事業費の半額を補助する。
 都の月額5000円支給に掛かる費用は1260億円超と破格。ただ、都の将来の財源不足に備えた「貯金」に当たる財政調整基金(23年度末見通し)は5638億円で、他の自治体からは「正直言ってうらやましい」との声も。事業費が7億円超の岐阜は「一般財源で賄う」、約3億円を計上した三重は「何とか工面した」としている。
 早稲田大学の小原隆治教授(地方自治)は「子育て支援を強めることには賛成だ」と評価。ただ、「生活の基盤に関わる施策はどこに住んでいても保障されるべきだ。限られた財源の中で自治体間競争をして他の施策にしわ寄せがいくのはいびつだ」と警鐘を鳴らす。 

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インタビューに答える東京都の小池百合子知事=1月5日、東京都庁
インタビューに答える東京都の小池百合子知事=1月5日、東京都庁

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