日銀人事、バランス重視=理論派総裁、実務支える両副総裁 2023年02月14日

 政府は14日、日銀正副総裁人事案を国会に提示した。新執行部は、元日銀審議委員で理論派の経済学者である植田和男次期総裁を、金融庁と日銀出身の2人の副総裁が実務面で支える構図となる。「バランスの取れた絶妙な人事」(政府関係者)との声が上がる中、新執行部は10年にわたって続いた異次元金融緩和の正常化に取り組む。
 執行部3人が学者、政府、日銀出身で構成されるのは現在と同じだが、学者が総裁に就くのは植田氏が戦後初めてとなる。
 植田氏は留学した米マサチューセッツ工科大で、米連邦準備制度理事会(FRB)のベン・バーナンキ元議長や欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ前総裁と同様、FRB副議長などを歴任したスタンレー・フィッシャー氏に師事。国際金融の世界で知名度もあり、岸田文雄首相が国会で指摘した「主要国中央銀行トップの緊密な連携」という総裁の資質に合致する。
 植田氏はまた、1998年の新日銀法施行から7年にわたり日銀審議委員を務め、量的緩和政策の導入など金融政策の現場にも関わった。今でも日銀が開く討論会などにたびたび出席し、日銀内からは「関係者みたいなもの」との声が上がる。理論だけでなく、これまでの金融政策も踏まえたかじ取りが期待されている。
 ただ、植田氏は審議委員を退任してから久しい。このため、金融政策の企画・立案の経験が豊富で、現在の異次元金融緩和を知り抜く内田真一日銀理事が副総裁としてきめ細かく実務を支える形になりそうだ。もう一人の副総裁候補である氷見野良三前金融庁長官は、国際的な金融規制交渉の最前線に長年立ち続けた。金融政策を通じた物価安定と並ぶ日銀の目的である金融システムの安定に力を注ぐ。 

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