「N分N乗」与野党に急浮上=少子化対策へ減税、政府慎重 2023年02月05日

 岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」を巡り、子どもの多い世帯ほど所得税が軽減される「N分N乗方式(世帯単位課税)」の導入論が急浮上した。減税によって家計を支えれば少子化に歯止めをかけられると、与野党の幹部から賛成論も相次いでいる。だが、課税方法を根本から見直すことにつながるため政府は慎重姿勢を崩しておらず、実現するかどうかは不透明だ。
 「画期的な税制だ」。1月25日の衆院本会議で自民党の茂木敏充幹事長がこう称賛したことで、導入論に火が付いた。立憲民主、日本維新の会、国民民主など野党各党も「検討すべきだ」と首相に迫っている。
 N分N乗方式は、1946年に導入したフランスの出生率回復に一役買ったとも評価される課税手法。Nは世帯単位で納税額を決めるための、いわば「家族の人数」を表す。独身は1、配偶者がいれば1を足す。子どもがいる場合は第1、第2子が各0.5、第3子以降は各1を加算して求める。世帯の合計所得をNで割り、税率を掛け合わせた後、今度はNを掛けて納税額を算出する。
 日本の現行税制では、例えば夫婦と子ども2人の世帯で総所得600万円の場合の納税額を機械的に試算すると、夫婦のどちらかが働く片働きなら77万2500円。共働きで所得が夫400万円、妻200万円なら計47万5000円となる。実際には事情に応じてさまざまな控除が適用され、単純には比較できないが、N分N乗方式が導入されると30万7500円に抑えられる。
 もっとも、個人単位で課税される日本で、フランス式の世帯単位課税に切り替えるのはハードルが高い。減税額は共働きよりも片働きの方が大きくなり、女性の社会進出を抑制しかねないと指摘される。鈴木俊一財務相は「高い税率が課されている高所得者に大きな利益を与える」と、格差拡大も懸念。公明党幹部は「メリット、デメリットを精査する必要がある」と慎重な議論を求めている。 

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