価格抑制「実感なし」=ガソリン補助金、支給から1年―6兆円超投入、見えぬ出口 2023年01月26日

 ガソリン価格の高騰を抑えるため、政府が補助金の支給を始めて27日で1年。時限的措置だったはずの事業は拡充・延長が繰り返され、9月末までに投入する予算額は6.2兆円にまで膨張している。ただ、価格抑制効果が消費者に十分に伝わっていないとの指摘もある。脱炭素化に逆行する手厚い支援策の「出口」は見えてこない。
 「給油するお客さんは、政府がいくら補助金を出しているのか実感していない。いつもガソリン価格が高い、高いとこぼしている」。山梨県山中湖村で給油所を経営する男性は補助金の恩恵を知らない人が多いとみる。
 補助金は2022年1月、ガソリンや軽油、灯油、重油の価格を抑える「激変緩和措置」として始動。石油元売り会社に支給する補助金の上限額は当初1リットル当たり5円だったが、ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が高騰し、3月に25円、4月に35円に引き上げられた。
 西村康稔経済産業相は今月23日の記者会見で、「本来ならば200円程度にまで上昇していたガソリン価格を170円程度に抑制し、原油価格高騰による国民生活や経済活動への影響を緩和してきた」と政策効果を強調した。22年12月に成立した22年度第2次補正予算では新たに3兆円を計上し、今年9月末までの延長を決めた。
 足元の原油価格は、世界経済減速による需要減退を見込んで落ち着いている。政府は補助金の上限額を1月から毎月2円ずつ減額し、5月には25円まで引き下げる方針だ。補助金事業を急にやめれば、買いだめなどの混乱が起こるため、上限額を徐々に縮小しながら「出口戦略」を探る。石油連盟の木藤俊一会長(出光興産社長)も「大きな財源を投入しているので、未来永劫(えいごう)お願いする立場にはない」と話す。
 ただ、このまま原油高や円安進行が収束に向かう保証はなく、9月末で事業を終了できるかは見通せない。西村氏も「先のことを予断を持って答えることは控えたい」と述べるにとどめる。
 政府は1月からは3.1兆円を投じ、電気・ガス料金の負担軽減にも乗り出した。巨額の財政資金を使ってエネルギー価格を抑え込む施策は、家計・企業の省エネへの意欲を鈍らせ、脱炭素化に逆行しかねない。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「税金の使い方として有効性に疑問だ。価格上昇で打撃を受けている家計や事業者に絞って支援する方が価値の高い政策になる」と指摘している。 

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ガソリンスタンドでの給油作業(資料写真)
ガソリンスタンドでの給油作業(資料写真)

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