防衛費拡充へ調整本格化=与党、法人・所得増税を視野 2022年11月22日

 政府・与党は、有識者会議の報告書を踏まえ、防衛費の規模や財源の調整を本格化させる。年末に国家安全保障戦略と併せて改定する中期防衛力整備計画(中期防)や2023年度予算編成・税制改正を通じ、今後5年間の歳出・歳入の枠組みを定める方針で、与党内では基幹税目である法人税と所得税に加え、たばこ税、金融所得課税の計4税目の増税論が浮上している。
 報告書では、防衛費拡充の財源について「幅広い税目による負担が必要だ」と明記。原案で財源の候補として盛り込んだ「法人税」の文言は経済界の反発が強く削除した。
 ただ、財源に税を充てるのは容易ではない。足元では物価高が家計を圧迫し、今後も高齢化に伴う社会保険料の負担増も見込まれる中で負担を個人には求めにくい。
 経済界は「薄く広く社会全体、国民全体で負担するのが適切だ」(十倉雅和経団連会長)と法人税を狙い撃ちにした増税論をけん制する。増税による財源が確保できなければ、代わりに新規国債の発行を求める声が自民党内で勢いづく可能性がある。
 岸田文雄首相は、従来の防衛費(22年度当初予算で約5兆4000億円)とは別に研究開発などの安全保障関連予算を一括計上する新たな枠組み「総合的な防衛体制の強化に資する経費」を創設すると表明。対象経費として(1)研究開発(2)公共インフラ(3)サイバー安全保障(4)抑止力強化に資する国際的協力―の4分野を例示した。海上保安庁の予算(23年度概算要求2530億円)も新たな安保関連予算に含めるかどうかは今後調整する。
 防衛費を巡っては、北大西洋条約機構(NATO)諸国の目標と同様に、国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に、5年以内に増額するよう自民党は求めている。達成には従来の防衛費の規模から5兆円以上の上積みが必要となる。
 一方、NATOの基準では、海保予算など安全保障関係の経費も国防費に含めている。防衛費の対象に安保関係経費なども組み入れる場合、GDP比2%への増額に必要な歳出増を抑えられるが、自民の一部には「防衛費の水増しだ」(国防族)との反発もある。
 23年度予算案を巡り防衛省は過去最大の5兆5947億円を要求。中期防などの内容を反映させるため、金額を示さない「事項要求」も多数盛り込んだ。これを踏まえ、自民党内では「6兆5000億円程度」を求める声が強い。 

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「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」座長の佐々江賢一郎元駐米大使(左)から提言を受け取る岸田文雄首相=22日午前、首相官邸
「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」座長の佐々江賢一郎元駐米大使(左)から提言を受け取る岸田文雄首相=22日午前、首相官邸

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