半導体産業復活へ官民協力=米国とも連携、競争力強化 2022年11月11日

 次世代半導体の国産化へ、日本勢が官民一体で体制強化に乗り出した。トヨタ自動車など国内企業8社が共同出資し、「Rapidus」(ラピダス)を新設。政府は補助金で支援する。年内には日米が連携する研究開発拠点も設立。かつて世界を席巻した国内半導体産業の復活へ官民や日米で協力して競争力を強化する。
 「10年、20年近く後れを取っている。われわれの得意なものづくりで全世界に貢献できる最後のチャンスだ」。ラピダス社長に就任した小池淳義氏は11日の記者会見でこう訴えた。
 次世代半導体は、自動運転や人工知能(AI)などの分野で不可欠とされ、回路幅を微細化するほど性能が高い。現在、3ナノメートル(ナノは10億分の1)まで量産化が進んでおり、台湾、韓国、米国が先行。日本が製造しているのは40ナノにとどまる。
 近年は経済安全保障上の観点からも供給網確保が急務となっている。先端品である10ナノ以下の半導体の世界製造は9割が台湾に集中。有事発生で調達が滞れば、幅広い産業に悪影響が及ぶため、国内での生産体制強化が必要になっている。
 日本は1980年代、半導体で世界をリードしていた。88年の日本メーカーの売上高世界シェアは5割。しかし、日米半導体協定の影響や米韓など海外勢の台頭でシェアを奪われ、2019年には1割まで落ち込んだ。
 政府は巻き返しのため、8日に閣議決定した22年度第2次補正予算案に半導体関連費用として約1.3兆円を計上。7月には米国政府と次世代半導体の量産化のため共同研究などで合意した。
 ただ、今回の取り組みで先行する他国に追い付けるかは不透明だ。これまでに政府は、国内半導体事業の再編に注力したが、日立製作所やNECなどの半導体事業を統合して発足したエルピーダメモリは12年に経営破綻した。
 経済産業省幹部は「日本だけで取り組んで失敗してきた歴史がある。有志国との連携を進めることが重要だ」と指摘する。国産半導体復権には、米国などとの連携に加え、継続的な投資や専門人材の確保がカギを握りそうだ。 

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