繰り返される大型補正=規模重視、予備費も拡大 2022年11月08日

 新型コロナウイルスの感染拡大が本格化して以降、大型の補正予算編成が恒常化しており、規模15兆円以上は、8日に閣議決定した2022年度第2次補正予算案で5度目となる。予算の規模を重視する与党の要求に押され、国会の議決を経ずに政府の判断で使用できる「予備費」の規模も拡大。先進国で最悪の水準となっている日本の財政状況が一段と悪化する懸念がある。
 財政法は「特に緊要となった経費の支出」について補正予算の編成を認めている。ただ、短期間で編成する補正予算は、当初予算と比べて厳格な査定が難しく、これまでのコロナ対策でも本来の目的から逸脱した事業が散見された。
 今回の補正では、電気・ガス代支援策など物価高対策として急を要する事業が盛り込まれた。一方で、大学の学部再編支援に約3000億円が計上されるなど必要性や緊急性が乏しいとみられる事業も目立つ。
 一橋大学の佐藤主光教授は「当初予算の規模を抑え、財政規律をアピールしたい財務省と、財政支出を拡大させたい与党の妥協点として大規模な補正予算が常態化している」と指摘する。
 予備費の規模も拡大している。政府は22年度当初予算でコロナ対策費など5.5兆円の予備費を計上。5月に成立した補正予算でも予備費を補充し、今回の補正では「ウクライナ情勢経済緊急対応予備費」を新設した。22年度に予備費として措置された予算は累計で12兆円に迫る。
 今回の補正では22兆8520億円の国債が追加発行される。政府が財政健全化の目安とする基礎的財政収支の国の赤字幅は22年度当初予算段階の約13兆円から約39兆円に悪化。25年度に国と地方を合わせた同収支を黒字化させる財政健全化目標の達成はさらに困難となりそうだ。
 鈴木俊一財務相は8日の記者会見で「財政状況が一層厳しさを増していることは事実であり、責任ある経済財政運営を進めることが重要だ」と強調した。 

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