トヨタ、原材料高に懸念=円安もコスト増に拍車 2022年11月01日

 トヨタ自動車が原材料などの価格上昇に頭を痛めている。2022年9月中間連結決算では円安の恩恵を受けた一方、資材価格高騰が響き、本業のもうけを示す営業利益は前年同期比3割減と2年ぶりの減益。幹部は「あらゆる部材が逼迫(ひっぱく)して高騰が重なり、取り巻く環境は大変厳しい」(熊倉和生調達本部長)と表情は硬い。
 トヨタは海外での販売が多く、「円安になると売上高が増え、収益が上がる」(近健太副社長)体質の企業。今回の決算では前年同期に1ドル=110円だった為替相場が134円と大きく円安に振れたため、営業利益は円安効果で5650億円も押し上げられた。
 だが、ロシアのウクライナ侵攻を機に物価上昇は一段と加速。鉄などの金属や部品、電気代など多くの資材が高騰したことで、7650億円の減益要因となり円安効果を打ち消した。
 円安は利点ばかりではない。輸入に頼る材料や燃料などの価格を押し上げ、コストを増加させる。日銀の9月の企業物価指数によれば、円ベースの輸入物価上昇率は前年同月比48.0%で、伸びの半分以上は円安要因だった。帝国データバンクが7月に行った調査では、円安が自社業績にプラスと考える企業はわずか4.6%。マイナスと答えたのは61.7%に上った。
 円安への懸念は、原材料を輸入、加工してトヨタに納める仕入れ先ほど強い。日本製鉄の広瀬孝副社長は「コスト面で従来以上にネガティブな影響を来している」と訴える。
 トヨタ系でも、鋼材大手の愛知製鋼は「対ドルで1円の円安が年間約4億円の利益減になり、非常に厳しい」(財務担当者)と指摘。部品大手デンソーは「過度な円安が続くとエネルギー高騰や景気後退が懸念される」(松井靖取締役)と警戒する。円安による物価高が国内景気を冷やせば、いずれ自動車の販売に影響が及ぶ恐れもある。
 トヨタは「円安の影響もあって輸入価格が上昇し、原材料、エネルギー費の高騰は仕入れ先にも大きな負担になっている」(熊倉氏)と認識し、鋼材などの値上げを順次受け入れている。今年度下期には恒例の値下げ要請を見送るほか、電気代などの値上がり分を一部肩代わりする新たな支援策も進める。
 コスト増要因は目白押しで、同社は今回も23年3月期の営業利益予想を期初通り維持。先行きを楽観していない。 

特集、解説記事