取引先の存続にも影=大型トラック、出荷再開見えず―日野自不正 2022年10月08日

 日野自動車のエンジン不正問題が取引先企業の事業存続にも影を落としている。日野自はこれまで計7機種のエンジンで生産に必要な型式指定の取り消し処分を受け、一時は国内向けのほぼ全車種で出荷を停止。一部は9月から徐々に出荷を再開しているが、主力の大型トラックは再開の見通しが立たない。取引先の部品メーカーや、日野自製車両をベースにクレーン車などを製造する架装メーカーでは苦境が続く。
 帝国データバンクは、日野自の生産が全面停止した場合、関連企業全体で年間最大1兆円の取引が消失すると分析する。帝国データによると、一連の不正問題による取引減少が最後の一押しとなり、日野自向けに燃料タンクなどを製造する東京都昭島市の部品メーカーが8月に経営破綻。大型車の生産再開のめどが立たない中、「他にも存続が危ぶまれる企業がある」という。
 日野自向けの取引が約6割の首都圏の部品メーカーでは、取引量が通常の半分程度まで落ち込んだ。日野自からの補償では減収分を穴埋めし切れず、「(追加の補償を)切り出したいが難しい」とこぼす。取り扱いの3~4割が日野自製車両の大手架装メーカーも「(日野自からの納車が)全く足りない状況が続き、売り上げが立たない」と話す。
 雇用維持の対応にも追われている。機械・金属産業の中小企業を中心に構成する「ものづくり産業労働組合(JAM)」東京千葉によると、不正が発覚した3月以降、日野自との取引減少が響き、一時帰休に踏み切る企業が増え始めた。中には、週の半分で操業停止を余儀なくされたり、余剰人員を外部へ出向させたりするケースもある。「日野自から入る生産計画の情報がころころ変わるため、頻繁に工場の稼働や人員配置を修正しないといけない」(業界関係者)との不満も出ている。
 一時帰休する従業員には休業手当が支給されるが、給与を下回ることが一般的。別の業界関係者は「事実上の減給だ。2桁以上減っているところもある」と実情を明かす。JAM東京千葉は、部品メーカーなどが頼る雇用調整助成金の支給が終了すれば「雇い止めなどの人件費抑制に動かざるを得なくなる恐れもある」と、事態の長期化に危機感を募らせる。 

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