インボイス、開始まで1年=対象300万事業者、準備に遅れ 2022年10月05日

 消費税額を8%、10%の税率ごとに分類して記載するインボイス(適格請求書)の導入まで、残り1年を切った。来年10月1日に始まる新制度の対象は約300万に上る事業者。インボイスを発行する手続きが済んでいないと、取引先の事業者が本来は納めないで済む消費税を支払わなければならなくなるが、税務署への登録など準備は遅れている。
 インボイスは、消費税率10%への引き上げに当たり、飲食料品などに8%の軽減税率を適用することにしたのと併せて導入が決まった。品目によって税率が異なるため、正確に納税額を計算するのが目的で、課税対象の商品やサービスの年間売上高が1000万円を上回る事業者が対象だ。
 事業者が税務署に納める消費税額は、顧客から受け取った税額から、仕入れの際に払った税額を差し引いて計算する。これを「仕入れ税額控除」と呼び、来年10月以降は登録番号と税率ごとの税額を記したインボイスを仕入れ業者から受け取らないと、支払った消費税分を納税額から差し引けなくなる。
 インボイスを発行するには税務署に登録する必要があり、申請受け付けは昨年10月に始まった。制度開始時から発行するには、原則として来年3月末が期限。申請から手続き完了まで時間もかかる。しかし、東京商工リサーチによると、登録が見込まれる約300万の事業者のうち、手続きを終えたのは今年8月末時点で99万件余りにとどまる。都道府県別の登録率は首位の富山が5割弱、最下位の栃木は3割強と低調だ。
 消費税の納税を免除されている小規模事業者は基本的に登録の必要はないが、得意先の要望でインボイスの発行登録を行うと、課税事業者として扱われて納税義務が生じる。
 日本商工会議所には、免税事業者から「課税事業者への転換で税負担が増え、資金繰りが厳しくなる」と懸念する声が寄せられているという。コロナ禍や物価高で経営環境も厳しいため、「混乱が避けられない場合は導入を延期すべきだ」と求めている。 

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