親中派に勢い、台湾断交も=28日に大統領選―中南米で外交戦激化・ホンジュラス 2021年11月19日

 【サンパウロ、台北時事】中米ホンジュラスで28日、任期満了に伴う大統領選挙が実施される。15人が立候補する中、与党・国民党の首都テグシガルパ市長ナスリ・アスフラ氏(63)と、野党連合のシオマラ・カストロ氏(62)による事実上の一騎打ちとなっている。同国は台湾と外交関係を結ぶ数少ない国の一つだが、やや優位が伝えられるカストロ氏は親中派。当選すれば台湾との断交に動く可能性がある。
 カストロ氏は、左派政党リブレを率いるセラヤ元大統領の夫人。カストロ氏は9月、「当選すれば、すぐさま中国との外交、通商関係を結ぶ」と強調した。ただ、10月中旬に中道政党と野党連合を組んでからは、あからさまな親中発言は控えている。
 ホンジュラスは援助も含めて政治・経済の対米依存度が非常に高く、外貨収入の柱は米国からの送金。現地外交筋は、台湾を後押しする米国との関係から、カストロ氏が勝っても当面は「様子見」を決め込む可能性を指摘している。
 ◇「経済」で中国攻勢
 中南米には現在、台湾と外交関係を持つ15カ国のうち9カ国が集中。中国は経済協力を武器に切り崩しを進め、「中台外交戦争」の様相を呈している。
 世界経済フォーラムによると、中南米の対中貿易額は2000年の120億ドル(約1兆3700億円)から20年には26倍の3150億ドル(約36兆円)に拡大した。中国は巨大経済圏構想「一帯一路」を旗印に情報通信分野を含めたインフラ投資を推進。最近では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に乗じた「ワクチン外交」も目立つ。台湾と外交関係があるパラグアイでは今年3月、「中国政府と近い」と称する業者がワクチン提供の条件として台湾との断交を要求したとされる。
 中国の動きが特に活発化したのは、16年に台湾で独立志向が強いとされる蔡英文政権が発足した後。中南米ではパナマ、ドミニカ共和国、エルサルバドルが台湾と断交し、中国と国交を樹立した。蔡政権は危機感を強めており、退任を控えたホンジュラスのエルナンデス大統領を今月12~14日の日程で台湾に招き、手厚くもてなした。同行したロサレス外相に勲章を授与するなど、つなぎ留めに必死となっている。 

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ホンジュラス大統領選の野党候補シオマラ・カストロ氏=6日、ナカオメ(AFP時事)
ホンジュラス大統領選の野党候補シオマラ・カストロ氏=6日、ナカオメ(AFP時事)
ホンジュラス大統領選の与党候補ナスリ・アスフラ氏=13日、マクエリソ(AFP時事)
ホンジュラス大統領選の与党候補ナスリ・アスフラ氏=13日、マクエリソ(AFP時事)

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