移民問題、EU非難に強気=ロシア後ろ盾のベラルーシ大統領 2021年11月10日

 【モスクワ時事】ベラルーシ経由で中東などからの移民がポーランド国境に押し寄せ、緊張が高まっている問題で、欧州連合(EU)から激しい非難を浴びるベラルーシのルカシェンコ大統領は、後ろ盾のロシアの存在をちらつかせながら「屈することはない」と強気の姿勢を見せている。ベラルーシはEUによる制裁への報復として、移民を送り込んでいるとみられ、扇動された移民が武器を使用するなど一層過激化する事態が懸念されている。
 ポーランドは8日、ベラルーシからの4000人近い移民の越境を阻止するため、国境に1万2000人以上の兵士を展開。移民らは鉄条網を切断して強引に越境を試みるなどしており、ポーランド国防省は「ベラルーシ兵士の監督と管理の下、行われている」と批判した。
 これを受け、ルカシェンコ氏は9日のインタビューで「われわれは争おうとはしていない」と述べつつ、争いになれば、ロシアを引き込むことになると警告。「ロシアは核大国だ」とも述べ、EUを強くけん制した。ロシアのプーチン大統領とルカシェンコ氏は今月4日に軍事面で両国の連携を強化する文書に署名している。
 不正が指摘された昨年8月の大統領選後も反政権派弾圧を続けるルカシェンコ政権に対し、EUは制裁を発動し、今年6月には石油製品などへの経済制裁も科した。ところが今夏以降、中東のイラクなどやアフリカからベラルーシ経由でEU加盟国のポーランドやラトビア、リトアニアに入る不法移民が急増した。
 ルカシェンコ政権は移民の手引きを否定しているが、ロイター通信によれば、移民の多くはベラルーシ企業と提携する中東の旅行代理店でビザや航空便、宿泊を含む「観光ツアー」を予約。料金は最高で約1万4000ドル(約160万円)に達することがあるという。 

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9日、ポーランドの対ベラルーシ国境付近の森林で座り込むイラクから来たクルド人家族(AFP時事)
9日、ポーランドの対ベラルーシ国境付近の森林で座り込むイラクから来たクルド人家族(AFP時事)
ベラルーシのルカシェンコ大統領=9月9日、モスクワ(EPA時事)
ベラルーシのルカシェンコ大統領=9月9日、モスクワ(EPA時事)

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