脱「石炭火力」加速=狭まる日本包囲網―COP26 2021年11月05日

 温室効果ガスの排出量を削減するため、石炭火力発電の廃止に向けた流れが加速している。国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、排出削減対策がない石炭火力発電所の廃止を盛り込んだ声明に、欧州主要国をはじめとする46カ国・地域が署名。アジアの新興国も脱「石炭火力」賛成に回り、利用し続けたい日本に対する包囲網は一段と狭まった。
 日本政府は10月、温室ガスを2030年度までに13年度比で46%削減する目標達成に向け、再生可能エネルギー普及に「最優先で取り組む」と明記した新エネルギー基本計画を閣議決定した。一方、計画は低コストで出力を調整しやすい石炭や、石炭よりも温室ガス排出量が少ない液化天然ガスに加え、原発も組み合わせて電力を確保する方針を堅持した。
 発電量が天候に左右される再エネの依存度が過度に高まれば、電力の安定供給に支障が出たり、発電コストが高まって利用者負担が増えたりする恐れがある。政府は火力発電に一定量を頼らざるを得ないとして、温室ガスを多く排出する旧来型設備の廃止や、水素やアンモニアを混ぜて排出量を減らす新技術の開発など、石炭火力を使い続ける道を模索している。
 岸田文雄首相はCOP26で「気候変動という人類共通の課題に、日本は総力を挙げて取り組む」と演説したが、声明への署名は見送った。しかし、経済発展を支える低コストの石炭火力を手放せないと日本政府が踏んでいた東南アジアからも、インドネシアやベトナムが署名国・地域に名を連ね、日本が取り残される恐れも出てきた。 

その他の写真

国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で演説する岸田文雄首相=2日、英グラスゴー(AFP時事)
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で演説する岸田文雄首相=2日、英グラスゴー(AFP時事)

特集、解説記事