紙たばこ、異例の増税要望=加熱式への逆風警戒―英系大手 2021年11月04日

 英国たばこ大手の日本法人が、自民党の議員連盟に対し、来年度税制改正で紙巻きたばこの増税を要望していることが4日、分かった。たばこ税は来年10月に「加熱式」だけが増税される予定で、商品によっては価格が紙巻きを上回る見通し。販売の軸足を加熱式に移す戦略の逆風になりかねないことから、たばこ会社が増税を自ら申し出る異例の事態となった。
 紙巻きの「ケント」や加熱式の「glo(グロー)」などを販売するブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BATJ、東京)が、自民議連「次世代たばこ研究会」に要望書を提出した。来年度の紙巻き増税と併せ、中長期的には加熱式の増税幅を紙巻きよりも抑えるよう求めている。
 紙巻きのたばこ税は2018年度税制改正で18年、20年、21年の3段階でそれぞれ1本1円ずつ引き上げることを決定。加熱式は18年から22年までの5段階で増税する。加熱式の課税方法が変わったため増税幅は商品によって異なるが、たばこ税額の割合を紙巻きの7~9割程度に引き上げる。
 現在、BATJの紙巻きは「ケント」が520円、「ケント・エス・シリーズ」が500円。既定方針通りに来年、加熱式のみが増税されれば、主力銘柄の「ケント・ネオスティック」は500円から520円へ値上がりする見通しだ。業界関係者の試算によると、日本たばこ産業(JT)の「メビウス」など、国内で販売される代表的な銘柄も加熱式の価格が紙巻きを上回る可能性がある。
 日本たばこ協会によると、紙巻きの販売額は20年度に前年度比11.8%減の2兆4749億円。近年の喫煙率低下に加え、新型コロナウイルス禍で外出先で喫煙する機会が減ったことなどが原因とみられる。これに対し、初めて集計された加熱式は1兆640億円と紙巻きの4割超に達し、紙巻き離れが進んでいる。 

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