対中政策、スタンスに違い=「敵基地攻撃」賛否二分―自民総裁選 2021年09月24日

 自民党総裁選の論戦では、外交・安全保障政策にも注目が集まる。違いが際立つのは、台湾有事を念頭に置いた備えへの考え方だ。覇権主義的な動きを強める中国への対処方針では、対話と抑止力のどちらに軸足を置くかで意見が分かれる。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を想定した「敵基地攻撃能力」の保有でも賛否は二分している。
 ◇タカ派色も
 「台湾有事」に言及するのは、高市早苗前総務相と河野太郎規制改革担当相の2人。高市氏は不測の事態について「可能性は高い」と指摘。河野氏も「(中国の)上陸侵攻の可能性を否定はできない」との見方を示す。
 その上で、中国との向き合い方に関し、河野氏は日中の経済的な結びつきの強さに触れ「したたかな外交を繰り広げる」と強調。岸田文雄前政調会長は「価値を共有する国・地域と連携し、しっかりものを言う」と述べ、同盟国、同志国との連帯を掲げる。河野、岸田両氏は外相経験者だ。
 野田聖子幹事長代行も同じく対話路線重視派で、「米中の対決を収めていく行司役を買って出る必要がある」とし、日本が対立の仲介役を担うべきだと主張する。
 これに対し、安倍晋三前首相と思想が近い高市氏は「実効的な抑止と対処に必要な能力をわが国が保有し、日米同盟で補完する」と述べ、日本の防衛力強化に力点を置く。米軍が中国を念頭に配備を検討する中距離ミサイルについても「日本国を守るために必要で積極的にお願いしたい」と表明。タカ派色がにじむ。
 ◇岸田氏に変化
 北朝鮮がミサイル開発を続ける中、安倍氏が首相在任中に目指した「敵基地攻撃能力」保有をめぐっても、高市氏は「やられてもやり返さないということではどうしようもない」と賛成の立場。抑止力として精密誘導ミサイルの必要性も訴える。
 岸田氏も「有力な選択肢」と主張。昨年の総裁選出馬時は慎重姿勢だったが容認に転じた。自身が決選投票に残った場合、安倍氏の支持を得たいとの思惑も透ける。
 一方、河野氏は「敵基地攻撃は随分前の議論だ」と消極的。北朝鮮に関する情報収集能力の向上を唱え、高市、岸田両氏と一線を画す。英語圏5カ国による機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」への参加も打ち出した。野田氏も河野氏と同様に「日本には情報収集能力がないことが一番の問題」と訴える。 

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