「アベノミクス」継承か修正か=分配拡大、財政出動―自民総裁選で4候補論戦 2021年09月23日

 自民党総裁選では、安倍、菅両政権が推進した経済政策「アベノミクス」の継承や修正をめぐり論戦が交わされている。4候補はそれぞれ、同政策の恩恵が乏しかった層への分配拡大や積極的な財政出動による経済成長などを主張。新型コロナウイルスで打撃を受けた経済を立て直す姿勢を強調する。
 アベノミクスは大規模な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略の「3本の矢」で構成。円安・株高で企業業績が改善し、富裕層の金融資産が増加した半面、賃上げの勢いは鈍かった。格差拡大を招いたほか、2%の物価上昇目標も達成できていない。
 河野太郎規制改革担当相はアベノミクスに関し、「企業部門は非常に利益を上げたが、賃金まで波及しなかった」と指摘。賃上げで労働分配率を一定水準に高めた企業の法人税を減税する方針だ。
 岸田文雄前政調会長は「令和版所得倍増」と銘打ち、子育て世帯への住居費・教育費支援、看護師・保育士らの収入増加などを打ち出した。岸田氏は「分配なくして次の成長はない」と格差是正を重視する。
 野田聖子幹事長代行は、教育など子どもへの投資を成長戦略の柱に据え、人口減少問題を解決するよう提唱。育児支援の財源として「子ども債」の発行を訴えている。
 高市早苗前総務相は、危機管理や成長分野への投資で大胆な財政出動を掲げる。基礎的財政収支(PB)を2025年度までに黒字化する財政健全化目標は、2%の物価上昇が実現するまで凍結。「黒字化目標がのしかかり、思い切った支出ができなかった」と述べ、公共事業などに10年間で100兆円を投じるとしている。
 高市氏以外の3候補も、コロナ禍を踏まえてPB目標にこだわらない姿勢で、次期政権でも財政拡張路線が続くとみられる。
 金融政策では岸田氏が日銀の大規模緩和の堅持を明言する一方、河野氏は物価目標達成は「かなり厳しい」と認めており、温度差がある。高市氏は日銀に対し、物価以外に雇用への配慮も求めており、財政・金融の両面でアベノミクスを強化する構えだ。 

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