「武器ビジネス」拡大の一途=軍事費は最高水準―米同時テロ20年 2021年09月10日

 【ワシントン時事】2001年9月11日の米同時テロから20年。アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンや過激派の台頭で世界的にテロの脅威が増大したことを受け、民間企業を巻き込んだ「武器ビジネス」は拡大の一途だ。
 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所によると、20年の世界の軍事費は1兆9810億ドル(約218兆円)と過去最高を記録した。首位の米国は全体の39%、2位の中国は13%と米中だけで半分を超えている。インド、ロシアと続き、日本は9位だった。
 過去20年間の軍事費拡大をけん引したのが、官民一体で「対テロ戦争」を進めてきた米国。国防総省や軍需産業、議会、大学などが結び付く「軍産複合体」が予算確保に動き、アフガンだけで1兆ドル以上を投じた。武器販売高の世界上位100社のうち4割が米国企業で、ロッキード・マーチンとボーイングが2強だ。
 世界では米同時テロ発生後、紛争地の戦闘業務や後方支援を民間軍事会社に委ねる「戦争の民営化」が加速。東西冷戦終結後に減少していた武器の輸出も増加に転じ、世界銀行などによると直近で年200億ドルを突破した。その規模は国連平和維持活動(PKO)予算の3倍に達する。
 米国がトランプ前政権時から安全保障政策の重心を「対テロ戦争」から中国との「大国間競争」に移しつつあることも、関係国の軍事費を押し上げている。新たな主戦場となる宇宙やサイバー戦には人工知能(AI)技術が欠かせず、マイクロソフトやグーグルなど米IT大手までもが国防分野で商機をうかがう。
 元軍人のアイゼンハワー米大統領(当時)は1961年の退任演説で軍産複合体の存在に初めて言及し、その影響力に警鐘を鳴らしていた。米シンクタンク「国際政策センター」のウィリアム・ハルトゥング部長は「軍産複合体の連携は強化されている」と語り、米中新冷戦を背景に軍拡競争が激化すると予想している。 

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アフガニスタン北部ハナバードの前線で、投降したばかりのタリバン兵(右)からロケット・ランチャーを取り上げる北部同盟の兵士=2001年11月(AFP時事)
アフガニスタン北部ハナバードの前線で、投降したばかりのタリバン兵(右)からロケット・ランチャーを取り上げる北部同盟の兵士=2001年11月(AFP時事)

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