農水省、有機農業の普及加速=環境へ配慮、地域に交付金 2021年09月07日

 農林水産省が有機農業の普及を加速させる。交付金を活用し、自治体が主導する形で生産者や地元小売業者、研究者などとの地域連携を後押し。持続可能な農業の実現に向け、有機栽培など環境に優しい農業技術を普及させる考えだ。
 農水省は2022年度予算の概算要求に、環境への負荷軽減に向け、地域単位で支援する交付金の新設を盛り込んだ。50年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとして脱炭素社会を実現する政府目標を踏まえ、同省は調達から生産、消費にわたる新戦略を策定。有機農業の取り組み面積を、同年までに全農地の25%(18年度は0.5%)に当たる100万ヘクタールに拡大するのを目指す。
 世界における有機農業の取り組み面積は18年に7150万ヘクタールとなり、08年比約2倍に伸びた。これに対し日本は18年度に09年度比45.4%増の2万3700ヘクタールと伸び率が低い。同省によると、化学肥料や農薬を使わない栽培手法は労力がかかり、収穫量や品質が安定しないのが原因という。
 同省は、100万ヘクタールの目標達成には「今の技術を猛スピードで広げることが必要だ」(担当者)と指摘する。これまでのように生産者の自主性に委ねるのではなく、モデル地区を選定して地域一体で支援する方式に転換。有機農業の人材育成や学校給食への使用などで地域住民に浸透するのを支援し、環境負荷の小さい農業に転換するハードルを下げる方針だ。 

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