包括的政権の樹立焦点=米軍、アフガン完全撤収 2021年08月31日

 【ニューデリー時事】アフガニスタンに駐留していた米軍が完全撤収したことを受け、イスラム主義組織タリバンの新政権樹立に向けた調整が31日、最終段階に入ったとみられている。今後は、少数派や女性を含め、国全体を代表する包括的政治体制を樹立できるかが焦点だが、市民の不安は消えず期待感もない。
 米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、政権が「完成間近だ」と語るタリバン幹部の話を報道。タリバンの最高意思決定機関「シューラ」(評議会)のメンバー26人全員が閣僚となる可能性を伝えた。
 別のタリバン幹部はこれに先立ち、テレビ演説で「国内外で受け入れられ、承認される政府をつくるため、さまざまな民族や政党から意見を聞いている」と述べた。
 タリバンが崩壊させた民主政権の予算の大半は国際支援で賄われてきた。しかし、欧米諸国を中心にタリバン新政権の動向を見極めるまで支援を停止する動きが広がる。支援再開のため「包括的な政府づくり」を強調する必要に迫られているとみられる。
 一方、実際の新政権では、最高指導者アクンザダ師を頂点に、3人の副官らによる評議会が閣僚の上に立ち、国家運営に当たる可能性が報じられている。副官は、米国との和平交渉に当たった政治部門責任者のバラダル師、初代最高責任者の故オマル師の息子で軍事部門責任者ヤクーブ師、最強硬派「ハッカニ・ネットワーク」を率いるハッカニ氏。このうち1人が大統領に相当する職に就く見通しが伝えられている。
 評議会が実権を握れば、極端なイスラム教解釈に基づく統治が止まらなくなる恐れがある。女性の教育や雇用を守り、タリバンが敵視してきたイスラム教シーア派など少数派、民主政権で働いていた公務員の権利を保障する包括的政治体制とは程遠くなる。
 首都カブール在住の男性は、匿名で取材に応じ「タリバン政権下ではましな未来は見えない。現在は女性は働きに出ることもできない。子供の将来を懸念している」と失望を隠さなかった。国際支援が途絶えたままの状態で、アフガン経済の先行きを心配する声も広まっている。 

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31日、カブールの空港で、米軍撤収を受けて記者会見するイスラム主義組織タリバンのムジャヒド報道担当者(中央)(AFP時事)
31日、カブールの空港で、米軍撤収を受けて記者会見するイスラム主義組織タリバンのムジャヒド報道担当者(中央)(AFP時事)
31日、カブールの通りを見回るイスラム主義組織タリバン(AFP時事)
31日、カブールの通りを見回るイスラム主義組織タリバン(AFP時事)
30日、空港に向けてロケット弾が発射されたとみられるカブール市内の車(EPA時事)
30日、空港に向けてロケット弾が発射されたとみられるカブール市内の車(EPA時事)

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