米、アフガン戦争に幕=タリバン「完全な独立」宣言―強引に撤収、退避打ち切り 2021年08月31日

 【ワシントン時事】バイデン米大統領は30日、アフガニスタン駐留米軍の撤収を完了したとの声明を発表し、2001年から続いたアフガン戦争の終結を表明した。一方、全権を奪回したイスラム主義組織タリバンは「完全な独立を勝ち取った」と宣言。今後、極端なイスラム教解釈に基づく統治を敷くとみられ、女性の権利や基本的人権がないがしろにされる懸念が強まっている。
 バイデン政権は米同時テロから20年の節目までの終戦宣言を目指し、強引に撤収を急いだ。これが、アフガン政府の崩壊を誘発。各国の退避作戦は混乱を極め、それに乗じたテロによって米兵を含む多くの命が失われた。同盟国との連携をうたう一方で、「米国第一」主義を踏襲する米政権に冷ややかな目が向けられている。
 米東部時間30日午後3時半(日本時間31日午前4時半)ごろ、駐アフガン米大使らを乗せた最後のC17輸送機がカブール空港を飛び立った。「最後まで作戦を続ける」。幾度となく繰り返したその言葉に反し、バイデン政権は撤収期限を前に退避支援を打ち切った。
 中央軍のマッケンジー司令官は記者団に、空港に対するロケット弾攻撃やさらなるテロの脅威があったため、最後の12時間は在留米国人が空港にたどり着けなかったと説明。「退避を希望するすべての人々を出国させられなかった」と認めた。いまだ米国民百数十人がアフガンに残っているとされる。
 バイデン氏は声明で、テロの脅威から兵士の命を守るため、「各軍トップと現地司令官が全員一致で退避作戦の終了を進言した」と理解を求めた。タリバンは希望者の安全な出国を保証しているといい、「約束を守らせる」とも強調した。バイデン氏は31日午後(同9月1日午前)、国民向けに演説する予定。
 米国が8月末までの全面撤収を目指す中、タリバンは最初の州都を陥落させてからわずか10日で首都カブールを制圧した。米国が支援してきたアフガン政府軍は抵抗できずに敗走し、ガニ大統領は国外に逃亡した。
 米国が過去20年間にアフガンに投じた資金は1兆ドル(約110兆円)を超える。米兵2461人が死亡し、アフガン人兵士と民間人合わせて10万人以上の命を奪ったアフガン戦争は、誰も予想し得なかった形で終幕を迎えた。 

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バイデン米大統領=26日、ホワイトハウス(AFP時事)
バイデン米大統領=26日、ホワイトハウス(AFP時事)
31日、米軍が撤収したカブールの空港で、警備に当たるタリバン戦闘員(AFP時事)
31日、米軍が撤収したカブールの空港で、警備に当たるタリバン戦闘員(AFP時事)

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