地下水保全へ一括支援体制=地盤沈下防止、条例制定も―政府 2021年08月28日

 政府は、地下水の水量や質の適切な保全に向け、自治体の条例制定などを一括して支援する体制づくりに乗り出す方針を固めた。関係省庁や有識者らの参画を想定し多様な課題に対応。専門的な助言や適切な管理手法を共有し、地盤沈下や汚染防止につなげる。
 地下水は、水道や農業、工業用水、消雪などに幅広く利用されており、過剰に採取すると、地盤沈下や、水道水源の不足を招く恐れがある。地盤の固さや水質、湧き出る水量などは地域によって異なるため、それぞれの地域で関係者が合意を形成しながら保全することが求められる。専門的な知識も必要で、関係者間で利害が対立するケースもある。
 そのため政府は、多分野にまたがる課題や解決策を共有する場となる「プラットフォーム」を新設することにした。国土交通省や環境省など関係省庁に加え、大学教授ら有識者や法律の専門家も参画。幅広く相談を受け付け、技術的助言や、条例制定をはじめとした制度面での解決案の提示を検討している。先進的な取り組みの共有も図る。
 関連する費用を2022年度予算概算要求に計上。今後、識者の選定など具体的な仕組み構築に向けた調整を進める。
 地下水管理をめぐっては、多くの自治体が条例を制定。鳥取県は、地下水を利用する飲料メーカーが相次いで進出し、資源の枯渇などが危惧されたことから、採取を制限する条例を13年に施行した。神奈川県秦野市では、工場が使用した化学物質によって飲料用の地下水汚染が発覚し、市民に不安が広がったため、条例で汚染防止を規定した。
 国交省によると、20年10月末時点で全国47都道府県と609市区町村が計834条例を制定。内容は、地盤沈下の防止のほか、地下水量、水質、水源地域の保全など多岐にわたる。全体の約84%に当たる698条例は、全面禁止や許可制などの規制を設けている。 

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