国際機関トップ、獲得へ戦略強化=UPU事務局長選に目時氏擁立―政府 2021年08月24日

 国際社会で日本の存在感を高めるため、政府は国際機関トップなどへ人材を輩出する戦略づくりに取り組んでいる。25日に行われる万国郵便連合(UPU)の事務局長選に日本郵便幹部を擁立。2019年以降、国連関係機関の日本人トップはゼロで、当選すれば2年ぶりとなる。
 国連には世界保健機関(WHO)など専門機関が15あり、国際的な郵便ルールを定めるUPUもその一つ。日本郵便の目時政彦常務執行役員がアジア出身者として初のトップを目指す。スイス、ベルギーからも立候補している。
 これまで日本は、松浦晃一郎・国連教育科学文化機関(ユネスコ)事務局長や天野之弥・国際原子力機関(IAEA)事務局長らを輩出してきた。しかし、天野氏は在任中の19年7月に死去。以降、国連関係機関の日本人トップは不在のままだ。
 一方、中国は国連専門機関のうち国連食糧農業機関(FAO)など3機関のトップを占める。国連の分担金でも19年に日本を抜いて米国に次ぐ2位となるなど、急速に存在感を高めている。国際機関は中立・公正な運営を求められるが、中国が自国に有利な国際世論をつくるのではないかとの懸念がある。
 こうした状況を踏まえ、自民党のルール形成戦略議員連盟(会長・甘利明税調会長)は昨年、国際機関の主要ポスト獲得へ省庁横断で取り組むことや、閣僚経験者の推薦などを提言。政府は今年2月、外務省と内閣官房国家安全保障局(NSS)を共同議長とする関係省庁連絡会議を設置し、戦略強化に乗り出した。
 外務省によると、日本の閣僚経験者が国連関係機関の主要ポストに就いたことはない。語学力の壁もあり、トップ候補となる人材の確保は容易ではないという。このため政府は、国連関係機関の専門職以上の日本人職員数を25年までに1000人とする政府目標を立て、国際機関職員を増やすことで幹部人材の育成を図る方針だ。 

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