円高に株安、供給網寸断=震災・原発事故で試練―11年上半期・日銀議事録 2021年07月30日

 日銀が金融政策決定会合の議事録を公表した2011年上半期は、3月11日に発生した東日本大震災とその後の東京電力福島第1原発事故により、日本経済が大きな試練を受けた時期だ。サプライチェーン(供給網)の寸断と電力供給制約による生産面への打撃に加え、パニック売りによる株安や投機的な円高が混乱に拍車を掛けた。日銀は金融市場の動揺を抑え、日本経済の不安材料を払拭(ふっしょく)することに奔走した。
 日経平均株価は3月15日、原発事故の先行きが見えない中で一時8200円台まで急落。円相場は3月17日に1ドル=76円25銭と戦後最高値(当時)を更新した。日銀は連日、大量の資金供給を続けたほか、日米欧の通貨当局は協調して円売り介入に踏み切り、金融市場の沈静化に努めた。
 実体経済面では、震災や津波で被害を受けた工場の稼働停止により部品供給網が寸断。自動車などの生産減につながった。計画停電による電力供給制約もあり、実質GDP(国内総生産)は4~6月期までマイナス成長が続いた。
 供給網の立て直しなどで、日本経済は7~9月期にはプラス成長に復する。ただ、欧州債務危機や米国財政への不安なども加わり、円高基調はその後も継続。日本経済の足かせとなり、政府・日銀はさらなる対応を迫られることになる。 

特集、解説記事