東芝、議長再任へ逆風=募る不信、25日に総会 2021年06月19日

 東芝が25日に開く定時株主総会に逆風が吹いている。昨年7月の総会をめぐり一部株主に不当な影響を与えたとする外部弁護士の調査報告書を受け、東芝は総会に諮る取締役候補者から社外取締役2人を除外した。しかし、株主らの不信は募ったまま。特に永山治取締役会議長の監督責任を問う声は強く、候補者案が承認されるかは不透明だ。
 10日に公表された調査報告書に、東芝は激しく動揺した。報告書は、経済産業省と一体となって一部の海外ファンドの影響排除に動いたやりとりを明るみにし、総会が「公正に運営されたものとはいえない」と指摘。監査委員会を「機能不全」と指弾した。
 東芝は既に13人の取締役候補者を株主に通知済みだったが、報告書公表直後、4人の社外取締役が連名で「全員は支持しない」と異議を表明。東芝は臨時取締役会を13日に開き、監査委員会委員長の太田順司氏、同委員の山内卓氏を再任案から除外した。翌日には永山氏が記者会見し、「(報告書の)指摘を真摯(しんし)に受け止める」と謝罪した。
 しかし、東芝株主の海外ファンド関係者は「(修正案に)満足だという人はいないだろう」と話す。米議決権行使助言会社2社は永山氏らの再任に反対を推奨。昨年の総会に独自の取締役選任議案を提出した筆頭株主、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントは17日、「株主に対する説明責任、結果責任を果たすべきだ」と突き付けた。
 東芝は機関投資家に議案修正の背景などを説明。18日には永山氏が、取締役会の重要な意思決定時には株主の意見も収集する方針を表明、株主との対話路線を強調した。永山氏を知るジョン・ルース元駐日米大使は、永山氏続投は株主の利益になると側面支援する声明を出した。それでも、議決の行方は見通せない。会社法では、総会当日でも候補者の修正や株主提案は可能。事態が再び急変する可能性も残る。
 一方、議案が可決されても東芝にはいばらの道が続く。東芝は定時総会後に臨時株主総会を開き、「グローバルな視野を持つ企業経営経験者」(永山氏)を念頭に取締役を補充する計画。牛島信弁護士は「実質的な意味で独立心のある取締役の選任が東芝再生には必要不可欠」と見るが、「火中の栗」を拾いガバナンス(企業統治)改革を担う有為な人材を見つけるのは容易ではない。 

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オンライン形式で記者会見する東芝の永山治取締役会議長=14日
オンライン形式で記者会見する東芝の永山治取締役会議長=14日

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