日立、成長路線にかじ=5年後に営業益倍増 2021年06月08日
日立製作所が、事業構造改革に一定のめどを付け、成長路線にかじを切り始めた。同社は8日、2026年3月期の連結営業利益について、21年3月期のほぼ2倍となる1兆円超を安定的に計上する目標を表明。社会のデジタル変革を追い風に収益拡大を目指すが、次世代の中核事業を生み出せるかどうかが課題だ。
「構造改革は最終ゴールではない。さらなる成長に向けた基礎工事の完了だ」。小島啓二次期社長は8日にオンライン形式で開いた投資家向け説明会で、こう強調した。日立はリーマン・ショック後の経営危機を脱し、デジタル技術を軸に事業構造の転換を推進。かつて「御三家」と呼ばれた子会社の日立金属売却を決める一方、1兆円規模の大型買収に踏み切った。
成長戦略の中核となるのが、データを活用して電力や鉄道など社会インフラを効率化する日立のIoT(モノのインターネット)基盤システム「ルマーダ」だ。7月末までに買収完了予定の米IT企業グローバルロジックとの相乗効果が大きいとみており、5年後の営業利益目標の半分をルマーダ事業で稼ぐ計画を掲げる。
不安材料は研究開発能力の低下だ。小島氏は「(将来の事業の柱になる)中長期的な研究開発が若干弱くなっている」と指摘する。医療データ統合や放射線がん治療などヘルスケア分野の成長市場に今後3年間で3000億円を投資する。ここから次世代の中核事業を育てられるかが、成長のカギを握っている。