遺伝物質、異なる「運び方」=予防効果に差―モデルナ・アストラ製ワクチン 2021年05月20日

 厚生労働省専門部会が承認を了承した、米モデルナと英アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチン。いずれも18歳以上を対象に2回接種し、体内に新型コロナの遺伝物質の一部を運んで免疫を作り出すが、運び方が異なる。
 モデルナ製は、米ファイザー製と同じ「mRNAワクチン」で、遺伝物質メッセンジャーRNAの一部を接種する。体内でウイルスのたんぱく質が作られて免疫機能が働き、抗体が作られる。壊れやすいmRNAは、脂質の膜で包まれている。
 海外での臨床試験(治験)では、発症予防率はファイザー製と同等の約94%で、接種間隔はファイザー製の3週間より長い4週間。零下20度で6カ月、解凍後は2~8度で1カ月保存できる。ファイザー製と違い超低温冷凍庫が不要なため、取り扱いが容易だ。米疾病対策センター(CDC)によると、痛みや発熱などの副反応の頻度も両者で大きな差はないという。
 アストラ製は、チンパンジーに風邪症状を起こすアデノウイルスをベクター(運び屋)として使うウイルスベクターワクチンだ。新型コロナの遺伝情報の一部をこの風邪ウイルスに組み込み、接種によって体内に送り込む。風邪ウイルス自体は体内で増殖しないように処理されている。
 発症予防率は約70%で、接種間隔は4~12週。2~8度で6カ月間冷蔵保存できるため、輸送や管理が非常に容易だ。ただ、接種後に血栓症で死亡する例が出ており、欧州の一部では60歳未満への接種を取りやめるなどの動きが出ている。
 国内で猛威を振るう変異株の英国型は、従来株より感染力は強いが、ワクチンの効果低減は確認されていない。モデルナ、アストラ製ともに従来株に対してと同様の効果があるとされるが、不明な部分もある。 

特集、解説記事