日系人は「歴史の一部」=バロウズ博物館長インタビュー 2025年05月12日 14時06分

全米日系人博物館のアン・バロウズ館長(同館提供)
全米日系人博物館のアン・バロウズ館長(同館提供)

 【シリコンバレー時事】全米日系人博物館(JANM)のアン・バロウズ館長は時事通信の書面インタビューに応じ、トランプ政権による助成金打ち切りの影響や、博物館が持つ意義について語った。主なやりとりは次の通り。
 ―助成金打ち切りを聞いた際の心境は。
 驚かなかったが、悲しかった。(第2次大戦中の日系人強制収容について学ぶ)研修に応募した教員に合格を通知したばかりで、中止の可能性を伝えなければならなくなったからだ。
 ―運営への打撃は。
 政府助成金は年間予算の約10%を占め、非常に大きい。16万点を超える収蔵品の管理に必要な空調設備の更新も、補助対象だった。
 ―資金工面の見通しは。
 全米の個人から寄付が殺到したおかげで、1週間弱で教員研修に必要な資金が集まった。空調設備には125万ドル(約1億8000万円)が必要で、民間の支援を期待している。
 ―少数派の歴史に対する政府の姿勢をどう見る。
 語られることのない歴史や多様な声、コミュニティーによる貢献や闘いの物語を封殺しようとする不穏な動きが、全米で見られる。歴史的に脇へ追いやられてきたコミュニティーのために勝ち取った保護を損なうものだ。
 ―政府の意図をどう理解しているか。
 JANMを含む博物館は若い世代に、社会的義務感を喚起するとともに、民主主義を守り共感を育むための行動を促している。日系人の歴史の複雑さは、わが国の歴史の一部だ。(「反米思想」排除を命じる)大統領令は、米国史から国家の不正義や過ちの章を消し去り、研究に基づく包括的な歴史を壮大で単純化された物語に置き換えることを狙っている。
 ―どう対抗していくのか。
 米国の文化的・民族的多様性への理解を深める上で、日系人の苦難の歴史、文化、業績を切り離すことなどあり得ない。資金枯渇を恐れて、われわれの価値を犠牲にすることはしない。これからも使命を果たし、歴史の教訓を未来に伝えていかねばならない。 

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