「苦肉の策」も海外から最多=台湾、パレスチナが初参列―敵対相手同席に不満も・広島平和式典 2025年08月07日 14時33分

平和記念式典に初参列した台北経済文化代表処の李逸洋代表=6日午前、広島市中区
平和記念式典に初参列した台北経済文化代表処の李逸洋代表=6日午前、広島市中区

 原爆投下から80年を迎え、広島市で6日執り行われた平和記念式典で、主催する市は今年、各国代表の参列に関し、「招待」から、日本と外交ルートのある国・地域に開催を「通知」する形式に変更した。選別を巡る批判を回避するための「苦肉の策」だったが、式典には過去最多となる計120の国・地域と欧州連合(EU)代表部が出席した。中国が今年も欠席した一方、初参列の台湾は歓迎を表明。パレスチナはイスラエルと同席することへの不満をあらわにした。
 市はウクライナ侵攻が始まった2022年から昨年まで、ロシアと同盟国ベラルーシへの招待を見送っていた。一方、パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルを昨年招いたことで、市民などから「二重基準」との批判を受けた。長崎市は昨年の式典にイスラエルを招待せず、米英などの大使が欠席する事態に発展。広島市は外務省などと、参列要請の方法の見直しを行った。
 6日の式典後に記者会見した台北経済文化代表処の李逸洋代表(大使に相当)は、「台湾がいかに平和を重視しているか国際社会に意思を表明することができる」と市の対応を歓迎。一方、パレスチナのシアム駐日大使は5日、式典に出席するイスラエルを念頭に「犯罪者と被害者を一緒に招くのは不公平だ」と訴えた。
 一転して市から通知を受け取ったロシアは今年も式典を欠席。ノズドレフ駐日大使は6月、ロシアの政府系メディアの取材に「市指導部が政治的な姿勢を改めず、(これまでの対応に)形式的な謝罪すらない」と批判した。
 広島市の担当者は取材に対し、式典を核兵器廃絶と恒久平和の実現を広く世界に呼び掛ける場だと説明。国際政治に翻弄(ほんろう)されることに懸念を示した。当初、各国に判断を委ねる「通知」としたことで参列国が減少する懸念もあったが、結果的に増加。「見直しが広く受け入れられた」と胸をなで下ろした。 

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平和記念式典に初参列したパレスチナのシアム駐日大使(奥)=6日午前、広島市中区
平和記念式典に初参列したパレスチナのシアム駐日大使(奥)=6日午前、広島市中区

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