中国、チベット巨大ダム着工=下流のインドは警戒 2025年07月22日 17時22分

中国の李強首相=15日、北京(EPA時事)
中国の李強首相=15日、北京(EPA時事)

 【北京時事】中国の李強首相は19日、チベット自治区ニンティを訪れ、世界最大規模の水力発電ダム建設の開始を宣言した。国営新華社通信が伝えた。ダムができる河川の下流に位置するインドは安全保障の観点から警戒を強めており、中印間の新たな火種となる可能性がある。
 ダムは総建設費約1兆2000億元(約25兆円)を投じ、ヒマラヤ山脈北部を源流とするヤルツァンポ川に建設。完成すれば、年間発電量は湖北省にある世界最大級の三峡ダムの約3倍に当たる3000億キロワット時になるとされる。ロイター通信によると、英国が昨年消費した電力量に匹敵する。操業は2030年代以降となる見通し。
 ヤルツァンポ川はチベットを西から東に横断した後、南下してインドとバングラデシュを通る。インドなどが懸念しているのは、有事の際に中国が上流で水量を調整し、下流での氾濫や水不足を引き起こす事態だ。
 中印関係は昨年の首脳会談を経て改善機運にあるが、長年抱えてきた国境問題は未解決のまま。両国間で紛争が再燃した場合、中国がダムを「武器」として利用する恐れがある。専門家らは、生態系への影響に加え、地震が多いチベットで巨大ダムを稼働させるリスクも指摘している。
 一方、景気低迷が続く中国は、ダム建設によって経済を刺激し、雇用を創出できるとみている。外務省報道官は「(ダムは)防災・減災に役立ち、気候変動対策にもなる」と述べ、下流地域の利益につながると主張している。 

海外経済ニュース