医療削減、地方から悲鳴=トランプ減税、与党に足かせも―米 2025年07月07日 16時31分

【ワシントン時事】トランプ米大統領肝煎りの大型減税関連法を巡り、低所得者向け医療制度「メディケイド」の削減が、地方の医療に大きな打撃を与えるとの懸念が強まっている。「われわれは危機に陥る」(米病院団体)との悲鳴も上がる。来年秋の中間選挙を控え、地方の医療削減は与党共和党の足かせになりかねない。
「米国の地方にとって、顔をまともに殴られるようなものだ」。南部ケンタッキー州のベシア知事(民主党)は6日、米CNNテレビのインタビューで、危機感をあらわにした。
大型減税関連法では、減税や国境警備対策の財源を捻出するため、月80時間の労働要件設定といった受給資格厳格化などを通じ、メディケイドの予算を圧縮。削減規模は向こう約10年で1兆ドル(約145兆円)超に上り、全米で1180万人が無保険者になるとの試算もある。
医療情報サイト「KFF」によると、米国の地方では4人に1人がメディケイドに頼る。ベシア氏は「ケンタッキー州だけで20万人が医療保険を失い、2万人の医療関係者が失職する。地方の病院では、収入の4~5割がメディケイドの可能性があり、病院の運営維持に関わる」と訴えた。
一方、ベセント財務長官はCNNに対し、「メディケイドは本来、妊婦や障害者、14歳未満の子供を抱えた家庭向けのものだ」と強調。「健常者は社会的弱者ではなく、労働要件設定は世論の支持も高い」と述べ、理解を求めた。
トランプ氏は3日の演説で、大型減税関連法は「中間選挙運動で使える。無駄な支出は削減される」と主張した。しかし、法案を巡っては共和党内でも異論が噴出し、上下両院とも僅差での可決だった。今後は有権者に対する同法の売り込みが「次の政治的なテスト」(米紙)となりそうだ。