仏政局、秋に再び緊迫も=マクロン氏の求心力低下―総選挙1年 2025年07月06日 14時04分

マクロン仏大統領=6月30日、スペイン・セビリア(AFP時事)
マクロン仏大統領=6月30日、スペイン・セビリア(AFP時事)

 【パリ時事】フランスの政治・経済に混乱と停滞をもたらした昨年7月の総選挙決選投票から7日で1年。マクロン大統領の中道連合は惨敗を喫し、保守・共和党との少数連立によりバイル内閣を支える。一方、野党は昨年暮れにバルニエ前内閣を発足2カ月半で総辞職に追い込んでおり、今秋の予算案審議を巡って再び政局が緊迫する可能性もある。
 「国民は公正な選択ができる」。マクロン氏は昨年6月、欧州連合(EU)欧州議会選での仏極右・国民連合(RN)の圧勝を受け、予想外の解散・総選挙というギャンブルに出た。結果は、中道が下院で議席を減らす一方、左派連合とRNは躍進。過半数に届かない3陣営が伯仲し、反目し合う異例の事態となり、過去数十年で有数の「深刻な政治危機」(AFP通信)が幕を開けた。
 賭けに負けたマクロン氏は求心力が低下し、政権のレームダック(死に体)化が進行。昨年末の国民向け演説では「(総選挙が)平穏より不安定を生み出した。責任は私にある」と述べ、事実上の謝罪を余儀なくされた。
 マクロン氏が判断の誤りを認めても、少数与党の窮地に変わりはない。中道と共和党の連携はほころびが目立つ。先月下旬には左派がバイル内閣の不信任案を提出。今月1日の下院で否決されたものの、RNが賛成していれば可決は必至だった。
 左派とRNは昨年12月、バルニエ前内閣の緊縮型予算案に反対し、倒閣に成功。ばらまきを訴える左派と、増税反対のRNは本来「水と油」だが、予算案否決という点では利害が一致した。
 それから7カ月。バイル内閣は400億ユーロ(約6兆8000億円)の財政赤字削減を目指し、秋までに予算案をまとめる方針。左派とRNの主張は不変で、状況は昨年に似てきた。
 最新の世論調査では、マクロン氏の支持率は22%、バイル首相は14%に低迷。来春の地方選、2027年の大統領選といった政治日程を見据えると、マクロン氏が新たに解散・総選挙を仕掛ける余裕があるか疑問だ。
 ただ、政党別支持率でトップを走るRNを実質的に統率するルペン前党首は「解散がないと思い込むのは非常に危険だ」と警戒。選挙の準備を怠らないよう、党内の引き締めに余念がない。 

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