中国、欧州との亀裂露呈=外相歴訪、安保・通商で溝―米関税期限前にけん制も 2025年07月05日 14時13分

【北京時事】中国の王毅共産党政治局員兼外相は6日、ベルギー、ドイツ、フランスの3カ国歴訪を終える。習近平政権は米国との長期対立を見据え、欧州との関係強化を急ぐ。しかし、今回の訪問では、安全保障や通商面で中国・欧州間の亀裂が露呈する結果となった。
「中国は米国ではない。米国と同じ道は歩まない」。王氏は2日、最初の訪問国ベルギーで欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表(外相)にこう強調。国際協調に否定的なトランプ米政権との「違い」を語り、中国が「秩序の擁護者」であるかように振る舞った。
しかし、カラス氏はウクライナ侵攻を続けるロシアに中国が物資支援を続けていると非難。中国によるレアアース(希土類)の輸出規制解除も求めた。王氏は「欧州が直面する問題は中国由来ではない」と一蹴。会談は約4時間続いたが、議論は平行線をたどった。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、王氏は会談で「ロシアの敗北は見たくない」と主張。ウクライナで戦闘が続けば、米国が対中政策に集中できないため、中国の利益にかなうと捉えているような発言もあったという。
王氏が続いて訪れたドイツでも、ワーデフール外相が中国による対ロ支援とレアアースの輸出規制に対する懸念を表明した。中国商務省は4日、王氏のフランス入りに合わせ、仏産が大部分を占めるEU産ブランデーに反ダンピング(不当廉売)関税を課すと発表。輸出価格で折り合った企業には適用を免除するとしているが、EUは「不公平かつ不当だ」と批判を強めている。
王氏の欧州訪問は、7月下旬に控える中国・EU首脳会議の地ならしの意味合いもあった。しかし、米ブルームバーグ通信は4日、中国側の要請で関連会議を含めた日程が2日間から1日に短縮されると報じた。中国側が態度を硬化させた背景には、安保・通商面での摩擦に加え、米国との関税交渉を進めるEUに対し、中国の不利益になる条件をのまないようけん制する意図もあるもようだ。
トランプ大統領が各国との交渉期限とする9日を前に、ベトナムは貿易協定に合意。中国製品の迂回(うかい)輸出を防ぐため、ベトナムで製品を積み替える場合は40%の高関税となる内容だった。英メディアによれば、米国と英国の5月の合意に関しても、中国は自国製品が英国のサプライチェーン(供給網)から排除されかねないとして警戒している。