物資届かず、ガザの飢餓悪化=支援の「武器化」批判―ユニセフ 2025年06月14日 08時11分

視察するユニセフのジェームズ・エルダー広報官=6日、パレスチナ自治区ガザ(ユニセフ提供)
視察するユニセフのジェームズ・エルダー広報官=6日、パレスチナ自治区ガザ(ユニセフ提供)

 国連児童基金(ユニセフ)のジェームズ・エルダー広報官は、イスラエルが3月以降、パレスチナ自治区ガザへの支援物資搬入を阻止していることで「飢餓のレベルが確実に変わった」と述べ、食料事情がさらに悪化していると訴えた。北部のガザ市から時事通信の電話取材に応じた。
 ガザでは5月下旬から、米イスラエル主導で設立された「ガザ人道財団(GHF)」が住民への食料配給に当たっているが、国連は中立性を疑問視し協力を見合わせている。エルダー氏は、GHFの配給所がガザ南部の数カ所にしか設けられておらず、「全住民を南部へ追いやるために人道支援が使われている」と批判。「武器化・政治化された支援は機能しない」と断じた。
 ガザ当局によると、GHFの配給所付近では、食料を求める住民がイスラエル軍の攻撃で死傷する事件が相次いだ。エルダー氏は、軍が指定する「戦闘地域」を通って食料を得られるのは「刃物を持った屈強な人だけだ」と指摘。女性や高齢者を含む大半の住民が支援を受けられない状況は「国際人道法違反に他ならない」と非難した。
 食料以外にも「人工呼吸器や麻酔薬など最も基本的な必需品すら搬入が拒否され、境界の反対側(イスラエル)にある」と説明。病院では鎮痛剤が不足しているため、痛みに苦しむ子どもたちの叫び声を耳にすると語った。
 空爆を逃れるたび避難先で攻撃を受ける生活は、子どもたちの精神もむしばんでいる。エルダー氏は「すべての子どもがメンタルヘルスの支援を必要としているのは、私の知る限り世界中でここ(ガザ)だけだ」と強調。「子どもたちに必要なのは無差別な銃撃や混乱ではなく、栄養のある十分な食料、安全、清潔な水、そして尊厳だ」と訴えた。 

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病院のベッドで検査を受ける3歳の男児=5日、パレスチナ自治区ガザ(ユニセフ提供)
病院のベッドで検査を受ける3歳の男児=5日、パレスチナ自治区ガザ(ユニセフ提供)

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