米政権、ハーバード大に止まらぬ攻撃=人材流出、経済打撃の懸念 2025年06月01日 15時41分

ハーバード大学=27日、米東部マサチューセッツ州ケンブリッジ(EPA時事)
ハーバード大学=27日、米東部マサチューセッツ州ケンブリッジ(EPA時事)

 【ニューヨーク時事】トランプ米政権による名門私大ハーバード大への「攻撃」が止まらない。補助金凍結に加えて打ち出した留学生の受け入れ禁止措置は裁判所が一時的に差し止めたが、5月30日には同大関係者へのビザ(査証)審査が厳格化。これまで米国の発展に寄与してきた外国人学生や研究者を締め出す動きが相次いでおり、人材の米国離れや経済的打撃が広がりそうだ。
 「数え切れないほどの留学生から転校について問い合わせを受けている」。ハーバード大の担当者は28日付の裁判資料で、混乱する学内の様子を詳述した。同大は学生の約4人に1人が留学生で、日本人も多く在籍してきた同大ケネディ行政大学院は約半数が各国から集まった留学生だ。
 トランプ政権はハーバード大が反ユダヤ主義対策を怠り、中国共産党と協力していると主張。トランプ氏の支持層が抱く高等教育界への反感もあり、4月に同大への20億ドル(約2900億円)以上の補助金を凍結した。その後も非課税資格の剥奪や全ての委託契約を打ち切る方針を示すなど、矢継ぎ早に圧力を強めてきた。
 トランプ氏は5月28日、ハーバード大などの留学生比率は15%以下が望ましいと発言。「留学生の多くはトラブルメーカーだ」と根拠を示さず主張した。
 ハーバード大は、政権の措置の撤回を求めて提訴している。しかし最終的に法廷闘争に敗れれば、留学生は転校しない限り在留資格を失う。入学予定者へのビザ発給厳格化の影響も見通せない。
 シンクタンク「米国政策財団」のアンダーソン事務局長は米紙に「自分の将来にとって重要な留学先を決める時、人々はある程度の確実性を望むものだ」と指摘。留学生の米国離れが進みかねないと警鐘を鳴らした。
 教育系非営利団体の試算によると、ハーバード大のある東部マサチューセッツ州で留学生がもたらす経済効果は約39億ドル(約5600億円)に上る。また、米国経済を支える起業家の中には留学生としてキャリアをスタートさせた人も多く、経済への打撃も懸念される。
 一方、米国外では人材確保の好機と捉えて受け入れを表明する大学が続出。香港科技大は即座にハーバード大留学生の「無条件での入学許可」を発表した。日本でも受け入れに向けた準備が進んでおり、大阪大は医学系研究科で最大100人の研究員を受け入れると公表。東京大は一時的な履修を認める支援策を検討中だ。 

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