圧勝与党、中道の受け皿に=嫌われた左右の極論―豪総選挙 2025年05月04日 17時00分

【シドニー時事】オーストラリアの下院総選挙で過半数を上回る圧勝を収めた中道左派の与党・労働党は、トランプ米大統領の再登場で国際情勢が不透明感を増す中で、中道を志向する有権者の受け皿となった。極端な主張は嫌われ、右派色を強めた保守連合や、急進左派の緑の党といった野党勢力は惨敗した。
豪メディアによると、候補者に順位を付ける投票形式での「1」の得票率は、労働党が34.7%、保守連合が31.9%だった。2022年の前回選挙では保守連合が上回っていたが、労働党は2ポイント伸ばし、保守連合は4ポイント近く沈んで逆転した。
パレスチナ自治区ガザの紛争への対応を巡り、保守連合は親イスラエルの姿勢を鮮明にし、ガザ支援の打ち切りを主張。イスラム系移民が人口の約15%に上るシドニー西郊のワトソン選挙区では労働党のバーク内相が大勝した。バーク氏支持の中東料理店従業員の男性(33)は「ガザ支援停止は人道的に論外。豪州が困ったとき、誰も助けてくれなくなる」と保守連合を非難した。
今回落選した保守連合トップのダットン自由党党首は、移民受け入れの大幅制限や、先住民を敬う儀式の削減を求め、多様性の尊重に敵意を示すトランプ氏と重なった。親の代から保守連合の支持者だったという女性(65)は「今は右に寄り過ぎて支持できない」と嘆き、今回は無所属候補に「1」を付けたと明かした。
一方、緑の党は厳格な化石燃料規制を唱える。ガザ問題では親パレスチナを前面に出し、与党と保守連合が推進する米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」にも批判的だ。これらの急進的主張は中道の人々に警戒感を持たれた。