日系人博物館、所蔵品保存に難題=助成金削減で空調改修できず―米 2025年04月11日 16時14分

 【ラスベガス時事】米ロサンゼルスの全米日系人博物館は10日、トランプ政権による助成金削減の余波で、所蔵品の保存・管理に必要な空調設備の改修費用50万ドル(約7200万円)を手当てできなくなったと明らかにした。中止の危機にあった教員向けの研修は寄付が集まり実施の見通しが立ったものの、新たな難題に直面。寄付の募集を継続する。
 政権で歳出削減に大なたを振るう実業家イーロン・マスク氏率いる「政府効率化省(DOGE)」が、公的機関「全米人文科学基金(NEH)」への助成金を停止。日系人博物館に対し10日、NEHから拠出されるはずだった空調設備改修資金の全額打ち切りが通知された。第2次大戦下での日系人に対する米政府の非人道的な扱いを伝える所蔵品など16万点以上の劣化を避けるためには、欠かせない資金だ。
 DOGEの助成金打ち切りでは、大戦下の強制収容の歴史を伝えるため同館が取り組んできた教員研修の資金約19万ドル(約2700万円)も見込めなくなっていた。だが、同館が9日に緊急声明を出すと、1日足らずの間に寄付の申し出が相次ぎ、今年予定する教員72人の旅費の半分を既に確保したという。
 研修には過去2年間で教員100人以上が参加し、学んだ内容は2万1000人の児童・生徒に伝えられた。バロウズ館長は声明で「全米から、あらゆる背景を持つ寄付者が支援してくださった」と謝意を示した。
 トランプ大統領は「多様性、公平性、包括性(DEI)」推進政策を敵視。全米の博物館や図書館に資金を拠出するNEHも標的となり、少数派の歴史を語り継ぐ取り組みに支障が出ている。 

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