日系人博物館も助成金削減=強制収容伝える研修が危機―米 2025年04月10日 14時18分

全米日系人博物館による研修で、教員が訪れた米カリフォルニア州のマンザナー強制収容所跡(ユーチューブより・時事)
全米日系人博物館による研修で、教員が訪れた米カリフォルニア州のマンザナー強制収容所跡(ユーチューブより・時事)

 【ラスベガス時事】米ロサンゼルスにある全米日系人博物館は9日、実業家イーロン・マスク氏率いる「政府効率化省(DOGE)」による助成金削減の影響で、強制収容の歴史を全国の教員に伝える研修が中止の危機にあると明らかにした。トランプ政権の歳出削減が、教員を通じ子供たちに第2次大戦下の人権侵害を伝える取り組みにも波及した。
 打ち切り対象は、博物館や図書館に資金を拠出する公的機関「全米人文科学基金(NEH)」への助成金。これにより日系人博物館は、NEHから受け取るはずだった約19万ドル(約2800万円)の資金が見通せなくなった。
 研修には過去2年間で31州の100人以上が参加した。地元メディアの先行報道を受けて寄付の申し出もあったが、今年計画する教員72人の研修には、まだ9万3600ドル(約1400万円)足りないという。
 ウィリアム・T・フジオカ理事長は緊急声明で、助成金打ち切りが「現政権による『多様性、公平性、包括性(DEI)』への攻撃であり、歴史を消し去ろうとする継続的な取り組みだ」と非難した。トランプ大統領は2期目就任後、DEI推進政策の廃止に取り組んでいる。
 フジオカ氏は、日系人博物館が「歴史の保存だけでなく、民主主義と人間の尊厳に対する現代の脅威に立ち向かうため、積極的に利用される場所でもある」と強調。圧力に屈する形で多くの組織がDEIへの言及をウェブサイトから削除したが、「何も削除しない」と誓った。 

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