保守連合と社民、危機下の合意=トランプ氏と極右が圧力―独 2025年04月10日 14時11分

ドイツのメルツ・キリスト教民主同盟(CDU)党首(左)とクリンクバイル社会民主党(SPD)党首=9日、ベルリン(dpa時事)
ドイツのメルツ・キリスト教民主同盟(CDU)党首(左)とクリンクバイル社会民主党(SPD)党首=9日、ベルリン(dpa時事)

 【ベルリン時事】ドイツで保守政党連合キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と中道左派の社会民主党(SPD)が9日、連立協定で合意した。国際秩序を揺るがすトランプ米政権と、独国内で勢力を強める極右「ドイツのための選択肢(AfD)」に対する危機感が、早期妥結への圧力となった。5月にも次期首相に選出されるメルツCDU党首は同日、「国の将来が危ぶまれている」と訴え、新政権を早期に軌道に乗せる決意を表明した。
 保守連合とSPDの交渉は、巨額の防衛財源を確保する基本法(憲法に相当)改正を連立合意に先立って実現させるという、異例の展開をたどった。トランプ氏が欧州防衛への消極姿勢をあらわにし、自立した防衛体制の確立が一刻も早く必要となったためだ。
 そうした切迫感は連立協定にも反映され、北大西洋条約機構(NATO)で「独軍が中核的な役割を果たす」と明記。従来なら国民の反発が必至だった兵役復活も、「当面は自主的な参加」としつつ盛り込んだ。
 米国の高関税政策で3年連続のマイナス成長に沈みかねない経済の立て直しも、喫緊の課題だ。企業減税やエネルギー価格の引き下げを通じ「競争力と成長の条件を整える」と訴えた。
 ドイツは移民に寛容な政策で知られてきたが、厳格化にかじを切り、受け入れの「制限」と「積極的な送還」を打ち出した。移民排斥を訴えるAfDの伸長に歯止めをかけたい思惑がある。
 ただ、直近の世論調査では、財政規律堅持の公約に反して基本法改正を主導した保守連合の支持率が低下。CDU内には組閣に当たり、議席数に劣るSPDが同じ7閣僚ポストを得るなど、譲歩が目立つことへの不満もくすぶる。有力紙の南ドイツ新聞は「メルツ氏は重荷を背負って首相としてのスタートを切ることになる」と厳しい船出を予想している。 

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