米NSC文書全文=天皇ニクソン会談(2)・完 2025年02月11日 07時36分
大統領は、強力な近代工業国としての日本の役割は、平和を維持し、発展と進歩に貢献する上で極めて重要だとコメントした。大統領は、1969年11月に佐藤首相がワシントンを訪問した際、20世紀最後の3分の1の期間における東アジアと太平洋の平和は日本と米日関係によって決定されるとした自身の発言を想起した。大統領は、日本は太平洋の平和の要だと語ったことを想起した。
天皇は、平和を維持するには日米間の緊密な友好関係を維持することが不可欠であることに同意した。
大統領は、平和を守るために中国本土との対話を始めることが今重要であるとの考えを示した。この大きな国は、勤勉な人口を抱え、進歩を遂げており、いつまでもこのまま無視することはできない。そこで、大統領は対話を始めるために北京を訪問する予定であり、これは最終的には平和の保障に寄与すると期待している。
天皇は「理論上は」この趣旨に同意することを表明したが、実際の諸問題はそう簡単には解決しないだろうと感情を込めて警告した。
大統領は、現段階での訪問では必要な対話を開始する以外のことは恐らく達成できないということに同意し、かつ大統領は中国が一夜にして変わるとは期待していなかった。しかし、どんなに時間がかかろうとも、平和を維持するための最良の希望である対話を開始するには、自身のイニシアチブが不可欠であると強調した。
大統領は天皇に対し、訪中が米国と日本との関係を犠牲にするものではないと保証した。自由企業の原則を共有する二つの強力な国家が、中国本土との間でお互いが持つだろう関係よりはるかに多くの共通点を有していることは明らかであり、貿易面ですら米日関係と米中・日中関係を比べてみれば、両国がいかに緊密であるか、そして今後もそうあり続けるだろうことを示していると指摘した。
天皇は、日本と米国との関係が維持され、強化されることを望んでいると表明した。
天皇は初めて月面を歩いたアポロ宇宙飛行士たちとの面会を想起し、彼らの科学的功績に高い敬意を表した。天皇は、その後の飛行が人類の科学的知識の深化に貢献し、直近のアポロ乗組員が最も意義深い月の石のサンプルの一群を携えて地球に帰還したことは、月の起源に関する人類の理解に大きく貢献すると考えていると述べた。
大統領は、天皇の関心に感謝の意を表し、宇宙探査に対する日本の関心と活動が高まっているとの報告に言及した。大統領は、このような偉大な事業は創造的な協力の絶好の機会を提供すると述べた。
大統領は、天皇による海洋生物学の研究と、これについて天皇が執筆した著書に言及した。
天皇は、幸運にも海洋生物学に対する自身の関心追求に時間を割くことができ、これに基づいてヒドロ虫類に関するささやかな研究を公刊したと述べた。
大統領は、日本が大きな進歩を達成しつつある海洋資源の開発は、世界の主要工業国の間で実りある協力ができるもう一つの分野であるとの考えを示した。
天皇は、それがそのような協力にふさわしい分野であることに同意したが、陸上のように海洋環境が開発によって汚染されることがないよう望むと表明した。
大統領は公害を避けるべきであることに同意し、環境問題に対処するため両国は建設的に協力して取り組んでいるとの見解を示した。
(ロジャーズ長官、福田外務大臣をはじめとする両国の一行がここで大統領と天皇に再び合流し、紹介された。数名のメンバーが、天皇がコペンハーゲンのチボリを訪問するよう提案した。)
第5格納庫に戻る車中で、天皇は、大統領とニクソン夫人がアンカレジまで足を運び自身と一行を迎えてくれたこと、また大変多くの人が夜遅くまで起きて式典に参加してくれたことに、改めて感謝の意を表した。天皇は、特に沿道の子供たちや腕に抱かれた乳児の姿に注目した。
大統領は儀仗(ぎじょう)隊中の数人の白ずくめのスキー兵に天皇の注意を促し、2人はそれぞれの国でのスキー人気について語り合った。
大統領は、天皇がアラスカを訪問したことに感謝の意を表し、天皇と一行の欧州への旅が大変楽しく成功するものとなり、無事に帰国することを祈念した。