米NSC文書全文=天皇ニクソン会談(1) 2025年02月11日 07時35分
覚書
国家安全保障会議
極秘/機微情報/閲覧のみ
会談録
参加者 大統領 日本国天皇 日本外務省 真崎秀樹大使(通訳) 在日アメリカ大使館 ジェームズ・J・ウィッケル氏(通訳)
日時、場所 1971年9月26日午後10時、エルメンドルフ空軍基地、アラスカ州アンカレジ
件名 大統領と日本国天皇の話し合い
総領事公邸(原文ママ)に向かう車中、大統領は到着式で公式に天皇と皇后に示したばかりの温かな歓迎の意を個人としても表明し、天皇がこの歴史的な初の外遊で米国に初めて立ち寄ったことについて、全ての米国民が大統領の抱く喜びと光栄の念を共有していると述べた。
天皇は、はるばるアラスカまで彼とその一行を迎えに来てくれた大統領とニクソン夫人、温かく迎えてくれたアラスカの人々に、深い個人的な感謝の意を表した。天皇は、アンカレジの気候が予想以上に暖かかったことに言及した。
大統領は、この暖かい気温とアラスカの人々による温かい歓迎が、米日間の緊密な関係を特徴付けていると答えた。
天皇は、今回の短い訪問が両国民の友好と親善の増進に寄与することへの希望を表明した。
大統領は、1953年に天皇が副大統領であった自身とニクソン夫人を東京の皇居で迎えてくれたことを想起し、その時と、その後6回にわたる民間人としての訪日のたびに日本政府と国民は自身を温かく迎えてくれたと述べた。
天皇は最初に会った時のことをよく覚えていると述べ、今回の訪問が両国間のさらなる親善に貢献することを希望すると繰り返した。
大統領はまた、1953年にハワイで皇太子夫妻に短時間会ったことを思い起こし、先ごろホワイトハウスに常陸宮夫妻を迎えたことに喜びを表した。大統領は、ニクソン夫人も2人とお茶を囲む機会を楽しんだと述べた。
天皇は、先に皇太子夫妻を丁寧に迎えてくれたことと、大統領とニクソン夫人が先ごろ常陸宮夫妻を丁重にもてなしてくれたことに感謝の意を表した。常陸宮夫妻からは日本に帰国した際にその喜びを伝えられた。天皇は、両国間の相互親善に基づく友好関係が重要だという自身の考えを再び明らかにした。
大統領はこれらが重要であることに同意し、天皇の訪問がその強化に寄与するとの考えを表明した。
総領事公邸(原文ママ)で、大統領は、歴史的な、しかし短い初訪問への喜びに触れるとともに、天皇と皇后をワシントンで迎えられることを、また、そのような機会に天皇と皇后が米国をより多く見物できることを、自身と米国民は望んでいると述べた。
天皇は、ワシントンを訪れ米国の一角以上を見ることができれば誠に光栄だと応じた。そうすることが望ましいと考えたのである。
大統領の質問に答えて、天皇はデンマーク、ベルギー、オランダ、フランス、英国、西ドイツ、スイス訪問という外遊日程について説明した。
大統領は、世界の工業大国である米国と欧州の各国、そして経済大国である日本が、人類の利益のために多くの分野で協力すべきだと強調した。大統領はまた、宇宙に限らず科学・医学の他の分野におけるこのような協力を推進するための組織を設立し、どの国での発見であっても全ての国で共有できるようにしたいという希望を表明した。
天皇は、これが価値ある好ましい目的であることに同意した。天皇は、第2次大戦の敗戦による荒廃からの日本の復興を可能にした米国の寛大な援助に感謝の意を表した。
大統領は、日本の驚異的な経済成長には日本国民の勤勉さと創造力が大きく貢献し、これを見過ごすことはできないと述べた。大統領は、懸命に働く意欲がなければどんな援助も国を助けることはできないとの見解を示した。日本は国民の勤勉さのおかげで経済大国となったが、米国と日本は自由企業体制への専心という共通点を持ち、両国の競争関係にもかかわらず、国際問題に関しては同じような政策を支持し続けるだろうという考えを明らかにした。大統領は、両国は強力な経済を擁しており、当然競争を続けていくだろうと指摘すると同時に、しかし競争が手に負えなくなることはないだろうという確信も表明した。
天皇は、両国が常に協力し続けることへの期待を表明した。