イスラエル、イランに強硬=次期米政権の支持期待―25年の中東情勢 2025年01月02日 14時56分

シリアとの境界に位置する占領地ゴラン高原の緩衝地帯に展開するイスラエル軍部隊=2024年12月(EPA時事)
シリアとの境界に位置する占領地ゴラン高原の緩衝地帯に展開するイスラエル軍部隊=2024年12月(EPA時事)

 【カイロ時事】中東情勢は2025年も、イスラエルの動向に大きく左右されることになりそうだ。イスラエルのネタニヤフ政権は24年を通じて、イスラム組織ハマスをはじめとする親イラン勢力との戦闘を継続。米国で今月20日に親イスラエル色の濃いトランプ新政権が発足後、イスラエルがイランに対してさらに強硬姿勢を取ることが予想される。
 ◇見えぬガザの平和
 イスラエルは24年、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を激化させた。並行して、ハマスに連帯しイスラエルへの攻撃を繰り返したレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラや、イエメンの武装組織フーシ派に対する軍事作戦も強化。ヒズボラとは24年11月に停戦で合意したが、ハマスやフーシ派との衝突は続いている。
 イスラエルは、ハマスの最高指導者を立て続けに殺害し、戦力を低下させた。ガザでは4万5000人以上が死亡し、街は廃虚となった。それでも停戦に至らないのは、「ハマス壊滅」を目標とするイスラエルと、組織の存続を前提に恒久停戦を求めるハマスとの溝が埋まらないためだ。
 トランプ次期米大統領は24年12月、就任までにハマスが拘束する人質の解放が実現しなければ「(ハマスは)地獄を見る」と発言した。これを受け、ハマスに対してこれまで以上に過酷な手段を取ってもトランプ氏は支持するとの見方が拡散。イスラエル高官は地元メディアに「型破り」な作戦を行えると表明し、カッツ国防相は今月1日、人質解放までハマス攻撃を激化すると警告した。イスラエルは停戦合意が成立しても軍がガザの治安を管理すると主張しており、ガザに平和が訪れる見通しは立っていない。
 ◇核に頼るイラン
 「核問題に関し、25年は重要な年になる」。イランのアラグチ外相は24年末にこう述べた。トランプ氏がイランに対して強硬な態度で臨むと伝えられていることを念頭に、核開発の加速を示唆したという解釈もある。親イラン勢力がイスラエルとの戦闘で弱体化し、シリアではイランが支援していたアサド前政権が崩壊。イランを取り巻く状況は厳しく、窮地に立つイランは核兵器の開発によって体制の存続を図ろうとする可能性がある。
 トランプ氏は1期目、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)などアラブ諸国との国交正常化を仲介した。イスラエルとアラブ諸国がイランという「共通の敵」を包囲する目標で一致できたことが背景にある。
 イスラエルはイスラム教スンニ派の盟主を自任するサウジアラビアと国交を正常化させ、イランを一層追い詰めようとしている。ただ、サウジはパレスチナ問題の解決に道筋を付けることを前提としており、ガザで戦闘が続く状況ではイスラエルの思惑を実現するのは容易でなさそうだ。 

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